2009 Fiscal Year Annual Research Report
近世平戸における対外関係と地域再編-平戸藩士・浦方の編成とその意識を中心に-
Project/Area Number |
09J03045
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
吉村 雅美 University of Tsukuba, 大学院・人文社会科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 対外関係史 / 日本近世史 / 地域史 / 歴史教育 |
Research Abstract |
松浦史料博物館所蔵史料・平戸市文化交流課所蔵谷村家文書を調査・収集し、近世日本の「四つの口」とは異なる地域と対外関係の関わりについて、平戸藩における認識を中心に検討した。そして、次の2点を解明した。 1.対外関係をめぐる藩士・浦方の認識と藩の認識の関係性について、(1)藩士・浦人が享保期に作成した先祖書・由緒書のなかに、唐人・朝鮮人・オランダ人との関わりが記されており、地域社会において近世初期対外関係と自らの関わりが意識化されていたこと、(2)平戸藩が天明期以降に松浦氏の系譜を編纂するなかで、これらの先祖書・由緒書を取捨選択し、幕府の対外関係を担う藩として幕藩制のなかに自藩を位置づけていったことを明らかにした。その成果の一部を、図書『ゆれる境界・国家・地域にどう向きあうか』のなかで公表した。 2.18世紀前半の平戸藩において対外関係が意識化された背景とその影響について、(1)清国の海禁解除後に幕府が九州諸藩に唐船打ち払いを実施させたなか、藩が「異国船御用」という近世初期以来の自藩の役割を再認識したこと、(2)藩財政の窮迫を受けて、藩は新田開発・捕鯨等を行う有力な浦人・町人を町年寄・藩士として編成したこと、(3)(2)のような有力者の家で対外関係に関わる由緒が形成され、天明期以降における藩の認識に影響を与えたことを明らかにした。この成果は、2010年4月24日の東京歴史科学研究会大会にて公表する。 従来、オランダ商館長崎移転後の平戸における対外関係については、藩士の海防・松浦静山の洋学という側面から研究されていた。本研究により、18世紀前半の東アジア情勢・地域社会の変容を背景に、平戸藩の各層において対外関係のなかに自らを位置づける認識が形成されたことを指摘し、「ロ」以外の地域と対外関係との関わりの具体像を提示した。今後は、平戸藩における認識と、幕府の認識・対外政策との関わりについて検討したい。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article]2009
Author(s)
吉村雅美
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Journal Title
ゆれる境界・国家・地域にどう向きあうか-歴史教育と歴史学の協働をめざして-(梨の木舎)
Pages: 281-301
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