2009 Fiscal Year Annual Research Report
現代日本社会における教育機会の不平等の生成・維持メカニズム
Project/Area Number |
09J03065
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤原 翔 Osaka University, 人間科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 社会階層 / 教育機会 / 合理的選択理論 / 相対的リスク回避 / ミクロ・マクロリンク / 学歴メリトクラシー / 社会構造 / 社会意識 |
Research Abstract |
本研究の目的は,教育達成の階級・階層間格差が維持されるメカニズムに対し,日本の事例をもとに理論的・実証的にアプローチすることである.本年度は,教育達成の階級・階層間格差が維持されるメカニズムを定式化した社会移動研究者のJohn H.GoldthorpeおよびRichard Breenの理論に注目し,それをミクロ・マクロリンクの枠組みから検討した.具体的には,(1)社会的位置および相対的リスク回避そして学歴メリトクラシーという概念を用いてマクロな社会構造とミクロな個人の意識の結び付きを明らかにし,それが教育機会の格差というマクロな結果(社会構造)として(再び)現れる過程を示した.そしてこれらの理論が日本社会に対してどの程度妥当といえるのかどうかを実証的に検討した.その結果,(2)階級・階層システム,社会的位置,そして学歴メリトクラシーといった社会構造に関するGoldthorpeらの仮定は妥当であり,その社会構造は実際に人々の意識にも反映されていること,(3)教育達成の階級・階層間格差は格差が現れる移行段階を徐々に変えながら,全体としては長期的に維持されていること,(4)階級・階層は子どもよりも親の教育期待に対して強く影響する傾向があること,(5)相対的リスク回避仮説を検証するための計量モデルを構築し,調査データを用いた分析の結果,日本においては職業期待や教育期待が,教育達成に対する階級・階層の効果を大きくは媒介していないことなどが明らかにされた.以上の結果はGoldthorpeらの理論を部分的には支持するものの,彼らの理論の中心となる相対的リスク回避仮説が日本社会においてはうまくあてはまらないことを示唆している.
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Research Products
(3 results)