2009 Fiscal Year Annual Research Report
両眼情報を統合する視覚メカニズムの心理物理学的検討
Project/Area Number |
09J03070
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
阿部 悟 Chiba University, 大学院・融合科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 両眼情報統合メカニズム / 視野闘争 / 知覚的誤結合 / 刺激属性間の統合様式 / 視覚情報処理過程 |
Research Abstract |
本研究の目的は、視野闘争現象(左右眼に大きく異なる刺激像を提示すると知覚的葛藤状態が生じ、2つの刺激像が交互に入れ替わって知覚される現象)の検討を通じ、両眼間での情報統合メカニズムを解明することである。本研究の特徴は、闘争の解決における視覚属性の影響を、先行刺激による闘争刺激の変調効果と呼ばれる現象を用いて検討していることである。これは、闘争刺激の一方を先行提示すると、同属性の刺激が抑制され他方の刺激が優勢となる現象であり、刺激属性に基づく闘争解決処理を反映していると考えられている。本年度の研究では、複数の視覚属性から成る闘争刺激の見えがどのように決定されるかを検討した。実験では、運動する色縞(例:右に動く緑縞vs左に動く赤縞)を闘争刺激とし、色と運動方向の組み合わせを操作した先行刺激による変調効果を検討した。その結果、闘争刺激の一方の色と他方の運動方向を組み合わせた刺激(左に動く緑縞)を先行提示した場合には、物理的に提示した刺激とは異なる知覚(右に動く赤縞)が生じた(誤結合)。誤結合の発生は色と運動の優勢/抑制が個別に決定されたことを示唆するが、一種類の視覚属性のみから成る刺激(静止した緑縞)を先行提示した場合には、誤結合は生じず、闘争刺激の一方が優勢となった(左に動く赤縞)。つまり、闘争刺激の優勢/抑制は色や運動といった個別の視覚属性に基づいて変調させることができるが、誤結合が生じるか否かは色と運動の組み合わせに依存することが示唆された。同様の知見は色縞刺激(色と方位の組み合わせ)を用いた研究でも認められた。以上、優勢/抑制の決定が単一属性に基づくのに対して、闘争刺激の見えは属性の組み合わせに影響されることから、闘争の解決には個々の視覚属性が並列的に処理される初期段階を含めた複数の処理過程が関与していると考えられる。
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Research Products
(7 results)