2009 Fiscal Year Annual Research Report
「快楽としての性行為」をめぐるポリティクス-避妊による快楽と生殖の分離に着目して
Project/Area Number |
09J03075
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田中 亜以子 Kyoto University, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | セクシュアリティ / ジェンダー / 日本近代史 / 夫婦 |
Research Abstract |
21年度においては、「快楽としての性行為」をめぐるポリティクスを解明するために、(1)性と愛と結婚を三位一体とする思想が妻像に与えた影響、(2)夫婦間セックスにおいて相互オーガズムが規範化されたことの意味、(3)姦通罪が廃止された歴史的経緯、という三つの具体的テーマを設定して研究をすすめた。以下、それぞれについての成果を述べる。 (1)1920年代における性と愛と結婚を三位一体とする思想の勃興は、生殖から切り離された「快楽としての性行為」の意味を考察する上で、大変重要である。本研究では、特にそうした思想の登場によって、妻には、夫の唯一の性的対象となることが求められるようになったことを明らかにした。このような研究は、「快楽としての性行為」の意味と求められる「女らしさ」のありようが密接に関連していることを指摘した点で重要な意義が認められる。 (2)男女間の性行為の目的を生殖ではなく、愛情に基づいた相互の快楽(オーガズム)に求める規範を「相互オーガズム」の規範と名づけ、そのような規範が普及したことの意味、および普及することとなった歴史的背景を1920~50年代に着目して明らかにした。こうした研究は、「相互オーガズム」の規範が、互いを相補的に必要とする「男」と「女」によって構成される「夫婦」という制度をセクシュアリティの方面から補強、もしくは自然化するのに寄与する規範であることを示した点で重要である。 (3)国家的観点から性と結婚がどのような関係を取り結ぶべきと考えられていたのか、ということを明らかにするために、1946年~47年にかけての「姦通罪」存否をめぐる国会での議論を分析した。その結果、性行為や夫婦関係を愛情の問題とする論理によって、一方では性と愛と結婚を三位一体とする思想が制度化されていきながら、他方では婚姻外性行為を個人の問題に帰すことによって「姦通罪」が廃止されたことを明らかにした。性行為を愛情によって解釈することの政治性を考える上で、意義のある研究である。
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Research Products
(3 results)