2009 Fiscal Year Annual Research Report
鉄触媒鈴木-宮浦カップリング反応の開発と糖誘導体合成への応用
Project/Area Number |
09J03169
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
橋本 徹 Kyoto University, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 鈴木-宮浦カップリング反応 / 鉄触媒 / ボロン酸エステル / ハロゲン化アルキル |
Research Abstract |
現在,鈴木-宮浦カップリング反応は医薬品や機能性物質の合成において重要な地位を占めているが,主にパラジウムやニッケルなどの希少金属が用いられている.本研究課題では,従来用いられているパラジウムなどの希少金属ではなく,普遍金属である鉄を触媒として用いた鈴木-宮浦カップリング反応の開発であり,これまでに,新規に合成したオルトーフェニレンジボスフィン(SciOPP)-鉄錯体を触媒として用いることで,ハロゲン化アルキルとアリールあるいはアルケニルボロン酸エステルとの鉄触媒鈴木-宮浦カップリング反応が効率的に進行することを見出した,ボロン酸誘導体は,空気・水に安定であるために広く有機合成に用いられているものの,安定すぎるため,反応性をあげるため適切な塩基と反応させアート錯体を形成させる必要がある、まず始めに,ボロン酸誘導体と塩基の検討を行った.一般的に用いられる無機塩基を用いた検討を行ったところ,全く反応は進行しなかった.そこで種々の有機塩基の検討を行ったところ,アルコール類,アミン類を用いても反応は進行しなかったものの,ボロン酸ピナコールエステルと有機金属反応剤(有機リチウム反応剤や有機マグネシウム反応剤)を反応させるとアート錯体が形成し,ハロゲン化アルキルとのカップリング反応が進行し高収率で目的物を得ることを見出した.この時,有機金属反応剤とボロン酸ピナコールエステルとが反応することで形成するアート錯体の構造が各種NMR解析により明らかになった.また本反応では,鉄触媒の他に触媒量のマグネシウム塩の添加も必須であることがわかった.マグネシウム塩の他に塩化アルミニウムを用いても同等な結果が得られることがわかっているが,これらが反応にどのように働いているかについては更なる検討が必要である.本反応は高い官能基共存性を有しており,ケトン,エステル,ニトリル基を有した基質を用いても,良好な収率で目的物を与えることを見いだした.
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