2009 Fiscal Year Annual Research Report
バリ島の仮面舞踊劇トペンの動態-儀礼とシアターの狭間で
Project/Area Number |
09J03209
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
吉田 ゆか子 University of Tsukuba, 大学院・人文社会科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | インドネシア / 文化人類学 / 仮面 / 芸能 / 儀礼 / 物質性 / パフォーマンス |
Research Abstract |
インドネシア・バリ島の仮面舞踊トペン・ワリ(以下トペンと表記)は宗教儀礼の一部として上演される。申請者は、トペンの儀礼であり、かつ人を楽しませる見世物でもあるという両義性が、この芸能のバリ社会における動態にいかに作用するのかを考察している。21年度は、7月、および8月後半から9月にかけての2回の現地調査において、主にトペン演者の数や特徴の時代的な変化について、具体的な複数の集落の事例を明らかにした。調査結果から、集落によっては、かつては共同体への奉仕活動として、一部の成員に半ば義務のように儀礼の場におけるトペン上演を依頼することがあったことや、学校教育制度の設立が、近年演者の増加に大きく寄与していること、またこれまで地域的に限られていたトペンの実践が、その学校制度や出版流通の拡大も背景に、全島的に広がりつつあることなどが明らかになった。この調査で得たデータは現在もまだ分析中であるが、いずれにしても「非常に専門性が高く、ごく限られた世襲の演者によって担われる」というこれまでのトペン像とは異なる諸相が、いくつも明らかになっている。 また、昨年度から引き続き、仮面を単なる道具でなく、人に働きかけるエージェントと位置づけ、演者やその他の人々との関わりの中で、仮面がどのような「働き」をするのか、を考察している。人間中心的な発想を転換し、人とものとのダイナミックな関わりをいかに捉えることができるか、という問いは近年人類学において重要さを増している。人を魅了したり、畏怖させたり、踊るように動機付けたりする仮面の「働き」には、その物質性(木製であり、可燃であり、染料が劣化する等)が様々なレベルで作用しているというという点について現在二つの論文にまとめている最中である。
|
Research Products
(2 results)