Research Abstract |
1.中学生対象の実験授業により,予習の効果の生起プロセスについて,予習時の質問生成に着目した検討を行った。その結果,意味理解志向という信念の高い学習者ほど知識の関連を問う質問を予習時に生成することが示された。また,質問に対する理解度をモニターさせない場合,意味理解志向によって授業理解が異なることが示された。先行研究では,予習が授業理解に与える効果には意味理解志向による個人差が生じることが示されていたが,その影響プロセスについては明らかにされてこなかった。本研究では,予習の効果の生起プロセスにおいて,意味理解志向によって予習時に生成される質問の質が異なること,さらに,予習時の質問に対するモニターの実行が異なることが示唆された。こうした知見は単に教科書を読ませた場合の予習効果の個人差を克服する活動(問いを生成させる,問いについて理解度をモニターさせる)を提案する上でも有用であるといえる。 2.高校生対象の調査により,英語学習における学習動機,予習方略,授業内方略の関係を検討した。その結果,予習時に単語や文の意味を推測する方略や,辞書を使って調べる方略を使用する学習者ほど,授業中には要点を絞る方略を多く使用していることが示された。また,予習時に単語や文の意味を調べておくと,授業では重要な情報のメモをとる方略の使用が促進されることも示唆された。さらに,そのような関係には学級間差が見られ,教師がどのような授業を行うかによって,予習時の方略の影響が異なることが示唆された。これまでの学習方略研究では,予習,授業のように学習場面を分けた検討は行われていなかったため,本研究の結果は有効な予習方略を把握する上で示唆に富むといえる。
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