2010 Fiscal Year Annual Research Report
ヨウジウオ科魚類の特異な配偶システムを決定する生態的要因と系統的制約の解明
Project/Area Number |
09J03248
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
曽我部 篤 広島大学, 大学院・生物圏科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ヨウジウオ科魚類 / 配偶システム / 性淘汰 / 魚類生態学 / 卵巣構造 / 卵生産様式 |
Research Abstract |
ヨウジウオ科魚類における配偶システム決定機構を、卵巣構造・卵生産様式における系統的制約ならびに現在の生息環境に対する適応という2つの視点で解明することが本研究の目的である。そのために卵巣構造・卵生産様式および配偶システムのヨウジウオ科内における変異を網羅的に調査し、分子系統樹との比較から各形質の進化過程を明らかにする.本研究による知見は、急激な環境変動に対する生物の適応性を適性に評価する上で重要であると考える。本年度は調査計画に基づき以下の4つの調査を行った。1)瀬戸内海に生息するヨウジウオ科魚類2種(ヨウジウオとオクヨウジ)について、水槽飼育実験を行い、卵巣構造と卵生産様式を調査した。ヨウジウオは1列の生殖隆起からなる卵巣構造をしており、非同調的で連続的な卵生産を行っていると推定された。一方、オクヨウジは2列の生殖隆起を持ち、同調的で不連続な卵生産を行っていた。本研究成果は卵巣構造と卵生産様式、配偶システムの対応関係に関する仮説を補強するものであった。2)クロウミウマについて同様の飼育実験を行った。その結果、本種の卵巣構造は2列の生殖隆起からなっており、従来の仮説を支持するものであった、しかし十分量の試料が得られなかったため、来年度も調査を継続し、卵生産様式の推定を行う予定である。3)沖縄本島備瀬崎におけるイシヨウジの自然個体群における繁殖生態に関する調査を行った,これまでに知見のある四国個体群とは異なり、本個体群は浅瀬のアマモ場に生息し、潮位変化に合わせて生息場所を柔軟に変化させること、夏季高水温時に繁殖が一時的に休止することが明らかになった。卵巣構造についても今後解析を進める予定である。4)日本各地でヨウジウオ科魚類のサンプリングを行い、新たに5種のヨウジウオ科魚類の卵巣・DNA試料を得た。
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