2010 Fiscal Year Annual Research Report
ファーマコプロテオミクスによる薬物の脳移行機構の解明
Project/Area Number |
09J03270
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
伊藤 克彰 東北大学, 大学院・薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | トランスポーター / 血液脳関門 / プロテオミクス / 薬物動態 |
Research Abstract |
血液脳関門におけるinfluxトランスポーター候補分子の発現スクリーニングを、組織サンプルの確保が容易な実験動物を用いて、質量分析装置によるタンパク発現量解析により行った。実験動物は、昨年度の研究成果から、血液脳関門におけるトランスポーター発現量プロファイルがヒトに近いカニクイザルを用いた。解析対象分子は、多くの薬物の細胞内取り込み輸送に関与するOAT(Organic anion transporter)及びOATP(Organic anion transporter polypeptide) familyを中心に、SLCトランスポーターを選択した。その結果、サル脳毛細血管において1分子の有機アニオントランスポーターが定量され、ヒトにおいても同一の有機アニオントランスポーターが定量できた。 ここで当初は、質量分析装置による解析のみの発現スクリーニングを予定していた。しかし、予備検討の結果、DNAチップ解析によるスクリーニングも可能であると考えられた。従って、より網羅的なスクリーニングとしてDNAチップ解析を行い、その結果を基に質量分析装置によるタンパク発現量の定量を行った。結果として、新たに1分子の有機アニオントランスポーターが、ヒトおよびサル脳毛細血管、ヒト血液脳関門モデル細胞(hCMEC/D3細胞)においてタンパクレベルで定量できた。このトランスポーターに関してノックダウン実験を行ったところ、hCMEC/D3細胞への生理的基質の取り込みの大部分に寄与していることが明らかとなった。ここで、ヒト脳毛細血管とhCMEC/D3細胞におけるタンパク発現量の定量的な比較から、in vivoのヒト血液脳関門においても、基質の脳毛細血管への取り込みの大部分に寄与していると考えられた。加えて、基質のhCMEC/D3細胞への取り込みは、カルボキシル基を持つ薬物によって阻害されたことから、可能性の一つとして、このトランスポーターがカルボキシル基を持つ薬物を基質認識していることが考えられた。これらの研究成果は、ヒトにおける薬物の脳移行性予測の基盤構築に寄与するものであり、本研究の目標は達成されたと考えられる。
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Research Products
(6 results)