2009 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子発現の進行波パターンの数理解析:脊椎動物の体節形成過程
Project/Area Number |
09J03287
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
瓜生 耕一郎 Kyushu University, 理学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 体節時計 / 細胞移動 / 数理モデル / 未分節中胚葉 / 同期 |
Research Abstract |
脊椎動物の未分節中胚葉で観察される体節時計遺伝子発現の進行波は、組織後方から前方へと移動していく。したがって進行波が安定に形成されるためには、未分節中胚葉の後方部分で遺伝子発現がすみやかに同調することが必要である。今年度は同期が素早く達成されるメカニズムの解明を中心に行った。具体的には未分節中胚葉の後方で観察される細胞の移動が体節時計遺伝子の同調振動に与える影響について数理モデルと計算機シミュレーションをもちいて解析を行った。 実際の生物は非常に短時間で同期状態を達成するのに対し、従来の数理モデルでは同期状態を達成するまでに非常に長い時間を必要とすることが知られていた。我々は未分節中胚葉後方で観察される細胞の移動に注目し、細胞移動を最もシンプルに表現する数理モデルを構築し、その影響を調べた。その結果、細胞移動は遺伝子発現の振動の同調を促進し、同期を達成するまでにかかる時間をより短くすることを示した。さらに細胞が組織の長辺方向により移動しやすい方が、より同期が起こりやすいことも示した。このことは移動の方向性と組織の形状の両方が同期を達成する上で重要であることを示唆する。 従来体節形成の分野では細胞の移動は遺伝子発現の同調を妨げるものと考えられてきたため、我々の結果は細胞の移動に対するいままでの認識を覆すものである。我々の研究結果によって細胞の移動を実験的に綿密に解析する重要性が示唆された。研究成果は米国科学アカデミー紀要に掲載予定である。
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Research Products
(7 results)