2009 Fiscal Year Annual Research Report
プトレマイオス朝エジプトにおける在地社会の再編―法・司法戦略・地方エリート―
Project/Area Number |
09J03289
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
石田 真衣 Osaka University, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 古代史 / ヘレニズム / プトレマイオス朝 / エジプト / ギリシア語 / デモティック / パピルス |
Research Abstract |
本研究の目的は、法制度の分析に偏りがちであったプトレマイオス朝エジプトの司法を法運用の実践面から解明することである。具体的には、嘆願書を主史料とし、そこから当事者たちが法的執行を要求する諸要因や法意識、さらには制度外にある政治的な権力構造や地域の社会構造を考察する。本年度はまず、アシュートとテーベの裁判事例を取り上げ、嘆願書による訴訟提起から法廷での審理にいたるまでの一連の紛争解決システムを検証し、地域社会における秩序はいかにして維持されたのかを究明した。その結果、嘆願書の受取人である地方役人が調停者としての役割を担う一方で、地域社会の秩序維持には、従来のエリート層である神官層との交渉が不可欠であったことが明らかとなった。その成果の一部に関しては、2009年6月に大阪大学で開催された第14回ワークショップ西洋史・大阪にて報告を行った。さらに、法廷外での紛争解決システムを解明するため、暴力や窃盗などの犯罪に関わる事例を含めて分析を続けている。嘆願の内容と地方役人による処理には、制度だけではなく、民族的対立や警察役人あるいは行政役人と在地住民との複雑な社会関係が反映されている。嘆願書史料の整理と分析は、社会の実情に沿った司法のあり方を明らかにするうえで重要である。2010年2月には、ベルギーのルーヴェン・カトリック大学にてW.クラリス教授の助言を仰ぎ、同王朝の司法、警察機構、嘆願書に関する資史料の収集を行った。これらの成果を学術雑誌に投稿するため、現在論文を執筆中である。
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Research Products
(1 results)