2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J03317
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
金 仙花 Kyoto University, 大学院・人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 近代日本思想 / 三木清 / 技術 / ポイエーシス / 自然 / 模倣 / 媒介 / 生活世界 |
Research Abstract |
申請者は、以下の研究計画で実施することを目標としてきた。 1.技術論について論じられていると見なしうる思想家、三木清や戸坂潤、下村寅太郎、三枝博音などの議論の読解を通じて、日本思想史の中での技術論の意味や位相を明確にする。また同時に、戸坂潤や三枝博音などが関与した「唯物論研究会」の機関誌や柳宗悦が関わった『白樺』における技術論に対する言説も緻密に耽読し、日本思想史の中で位置づける。 2.日本思想の中で技術論の思惟を探る作業と同時に、西洋思想史の中で論じている技術論の思想を検討する。西洋思想史の文脈で技術論は、道具論的立場(ベール)、社会的決定論(マルクス、ウェブスター)、技術決定論(マンフォードやベンヤミン、ハイデガー、マルクーゼなどのフランクフルト学派)という、三つに分けられる。それぞれの技術論に対する立場を検討・考察した上で、それらが内包する限界性と可能性を探索する。 3.日本思想史での技術論と西洋思想史での技術論を比較・検討し、日本思想での技術論がもつ認識論的独創性や違いを発掘・抽出し、それを総合的に再構築する。 そして、現在「20世紀初技術に対する哲学的省察-三木清を中心として-」というタイトルの論文を作成中である。この論文は、技術の主体的位相に注目し、技術を人間の物事を創りあげるポイエーシスの「過程」としてとらえ、自然の「模倣」、自然と世界との「媒介」として理解していた三木清を中心として日本技術論の形成過程を探るものである。三木にとって、何かをつくるのは、その制作における因果律と目的律の統一を人間の行為によって実現させることを意味する。媒介的であることの意義は、終局的には、目的と手段、主観と客観との間に統一をもたらすことであることが明らかとなった。こうして「技術」・「模倣」の論理を日本思想の文脈から抽出し、技術に対する新しい認識論・存在論的な思想の可能性を探った。
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