2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J03317
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
金 仙花 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 技術 / 総力戦体制 / 労働手段 / 行政管理 / テクノロジーの支配 / 技術否定論 / ポイエシス / 西田哲学 |
Research Abstract |
本研究は、近代日本における「技術」言説をめぐる思想的考察を主なテーマにしている。平成22年度研究成果としては、具体的に「日本戦時期における思想空間についての一考察-総力戦体制を中心に-」という題目で、2010年6月26日日韓国際学術大会で発表した。内容としては、1930年代から戦時期にかけて社会と技術に関する議論が活発に行われたことに注目した。主に1930年代のマルクス主義者は、技術とは「労働手段の体系」であると唯物論的に理解していた(戸坂潤など)。また、技術論がもつ新しい射程の一つに、政治と行政管理の領域があった。コミュニケーションや計算、監視のための機械という狭義の物質的領域から、行政管理の役割における効率性のパフォーマンスにまで技術の意味は拡大される。こうして、支配の手段として理解されていたテクノロジーが、支配するテクノロジー、支配の課程に関わるものとして理解されるようになった状況を、当時の「総力戦体制」を中心に考察を進めた。だが、支配の力学としての技術論の背後にはつねに、技術に対する文化的悲観主義が潜んでいることがわかった。それを単に技術否定主義といった過去へと回帰させるのではなく、技術のもつ遂行的、実存的な行為としての面において解釈する哲学作業も同時的に行われることに注目し、それがおそらく西田をはじめ、三木清などに見られる西田哲学の「ポイエシスの哲学」とつながることに気づいた。現在、西田哲学を中心にそのポイエシスの観点から技術や生命の問題を思想的に考察する作業に取り組んでいる。
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Research Products
(1 results)