2009 Fiscal Year Annual Research Report
ウィリアム・モリスおよび近代の生活芸術思想史に関する建築論的研究
Project/Area Number |
09J03329
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉山 真魚 Kyoto University, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ウィリアム・モリス / アーツ・アンド・クラフツ / 手工芸 / 工場 / 共同体 |
Research Abstract |
今年度は,ウィリアム・モリスの1880年代の制作論を中心に研究し,その成果を論文として執筆し,その内容に基づいた口頭発表を行った。 まず,日本建築学会近畿支部における論文(発表)では,アーツ・アンド・クラフツ展覧会とモリスの関係を検討したのち,機械と手工の問題および制作における人間の問題について論じた。1880年代,モリスは芸術運動だけではなく社会主義運動にも関与しているが,両運動を貫いているのは,制作(生産)における人間の主体性への着目である。モリスは人間の主体性の問題を「デザイン」(制作における芸術的側面)と「職人技術」(制作における技術的側面)の不可分性として捉えていた。本論において,アーツ・アンド・クラフツ運動の初期にモリスが「デザイン」と「職人技術」という観点から建築および装飾芸術の本質について言及していることを指摘したが,この内容はモリス以後のアーツ・アンド・クラフツ運動の展開を研究する上で重要であると考える。 次に,日本建築学会2009年度大会における論文(発表)では,モリスの「手工芸」についての言及が上述のような技術論的内容に止まらず,環境論的内容を含んでいることに注目し,アーツ・アンド・クラフツ運動と「美しい環境」の関係について「工場」に関する記述に即して論じた。本論によって,制作環境を生活環境として構築するというモリスの考え方が明らかとなったが,ラスキンやマルクスの思想とモリスの思想との連関についての研究が課題として残った。 また,2009年9月,英国において,アーツ・アンド・クラフツ運動に関与した建築家の情報収集,建築作品の現地調査を行った。次年度,アーツ・アンド・クラフツ運動における<life>の概念を中心に分析する際に有意義となると思われる資料および情報を得た。
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Research Products
(4 results)