2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J03340
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
三田 覚之 Osaka University, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 天寿国繍帳 / 聖徳太子 / 中宮寺 / 法隆寺献納宝物 / 刺繍工芸 / 金銅灌頂幡 |
Research Abstract |
本年は、研究実施計画に沿い、まず東京国立博物館蔵「繍仏裂」(N32-(1)~(14))について調査ならびに写真撮影を行った。その結果、刺繍の下地裂である「〓(しじら)」の製法が、従来の見解と異なること、また、下地裂の織密度・繍糸の幅と回転数・図柄の様式により、作品が大きく二種類に分類できることが判明した。これは作品の一具性、また七世紀における刺繍の幅を考える上で重要な発見であり、今後はこうした成果を踏まえた上で、検討を進めていきたい。 また兵庫県の香雪美術館にご協力いただき、個人所蔵の「法隆寺裂貼り交ぜ帖」の調査を行った。これは奥書によって1842年に法隆寺から付与された古裂帖と知られ、献納宝物中の染織作品をほぼ網羅する種類をそなえている。これまで未紹介であり、かつ新出の作例も数種類含まれていることから注目されるが、中でも新たに天寿国繍帳の断片が見出された意義は大きく、もはや原形を知り得ない繍帳を考察するにあたって貴重な情報を提供するものと言える。 研究成果としては、東京国立博物館所蔵の「刺繍残片」について論文をまとめ、科研報告書『仏教美術における絵画と彫刻』(研究代表:藤岡穣<大阪大学教授>)に掲載した。また「繍仏裂」と本来一具を成していたと考えられる金銅灌頂幡(法隆寺献納宝物N58)についても研究を進め、待兼山芸術学会・東方学会・古画研究会においてそれぞれ研究成果の発表を行った。この作品については本年度中に論文をまとめており、4月刊行予定の東京国立博物館機関誌『MUSEUM』(査読付き)に掲載が決定している。 また、上代における工芸研究の一環として、金銅仏等の調査にも多く参加し、知見を深めることができた。特に天寿国繍帳の主題と考えられる「兜率天(弥勒菩薩の浄土)」と関連して半跏思惟像の研究にも取り組んでおり、今後はこうした周辺領域に対する研究成果も踏まえ、総合的な見地から検討を進めていきたいと考えている。
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Research Products
(3 results)