2009 Fiscal Year Annual Research Report
二条家撰集を中心とする鎌倉中・後期勅撰和歌集史の再構築
Project/Area Number |
09J03381
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
村山 識 Osaka University, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 『続後撰集』 / 『続古今集』 / 後嵯峨院 / 藤原為家 / 反御子左派 |
Research Abstract |
本年度は、二条家撰者による勅撰集「二条家撰集」の成立基盤となった後嵯峨院政期における勅撰集の成立と、その周辺を考察し、関連する調査を実施した。 後嵯峨院政期に編纂された勅撰集には、藤原為家が単独で撰者となった『続後撰集』と、為家に単独で撰者下命がなされながら、その後、真観等が撰者に追加された『続古今集』の二集がある。 前者『続後撰集』で始めて単独撰者となった為家は、当時の宮廷歌壇における指導者として評価されているが、その影響力や、指導の実態については、これまで言及されてこなかった。そのため、特に宝治元年に後嵯峨院仙洞で行われた中殿和歌御会における、為家の講師作法指導につき考察し、為家の歌壇指導の実態の一端を明らかにするとともに、その後の為氏等、二条家撰者の同様の事例と比較することにより、二条家撰者等の歌壇指導とその継続性につき、新たな知見を得た。 後者『続古今集』は従来、その成立につき、為家とその対抗者である真観等「反御子左派」との対抗関係を背景として記述されてきており、必ずしも下命者後嵯峨院と当初の単独撰者為家との関係性は追求されてこなかった。本研究においては、その関係資料の再解釈を通じて、『続古今集』の撰者追加に至る過程の背景には、為家と反御子左派との対立のみならず、後嵯峨院と為家との撰集に対する思惑のすれ違いがあった可能性があること、また、後嵯峨院は撰者追加以後、『続古今集』の完成披露である「竟宴」に至るまで、西園寺実氏や宗尊親王などの貴顕歌人、為家や反御子左派歌人らのバランスを取る形で、撰集作業に主体的に関わっている形跡があることが明らかになった。 本年度は、これらにつき、学会・論文発表の機会を得なかったが、後嵯峨院と為家との関係性、後嵯峨院の撰集に対する態度は、その後の鎌倉中・後期勅撰集を考える上でも極めて重要な事柄であり、来年度以降、順次公表してゆくことを考えている。
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