2009 Fiscal Year Annual Research Report
マダガスカル北西部乾燥落葉樹林におけるチャイロキツネザルによる種子散布
Project/Area Number |
09J03399
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 宏樹 Kyoto University, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 種子散布 / マダガスカル / キツネザル / 採食行動 / 活動性 / 動物生態学 / 動物行動学 |
Research Abstract |
平成21年度は、2005年から2007年の21ヶ月に及ぶマダガスカル北西部アンカラファンツィカ国立公園で行われたチャイロキツネザル(Eulemur fulvus)の行動観察データの整理及び分析を中心に行った。 2006年にマダガスカルの動物園において実施した飼育個体に対する実験結果から、チャイロキツネザルの果実と種子の採食時の行動と、種子の消化管通過時間、飲み込むことのできる種子のサイズについて分析し、執筆した論文を「霊長類研究」誌において発表した。この論文では、アンカラファンツィカの森林内で、長径7.8mm以上の大型種子を飲み込むことのできる動物はチャイロキツネザルしかいないと推測されることから、チャイロキツネザルの大型種子植物に対する種子散布機能の重要性を示唆した。 2006年12月から1年間行ったアンカラファンツィカ森林での野外調査の結果から、チャイロキツネザルの活動性、食性、遊動パターンと、気温、日射量、降雨量、森林の落葉速度(林冠被覆率)などの環境要因のとの関係を分析し、7月に行われた第25回日本霊長類学会大会において口頭発表を行った。さらに、これらのデータに基づき、霊長類の中でもチャイロキツネザルを含むEulemur属に特有である日中も夜間も活動する「周日行性」の適応意義について議論した論文を執筆した(現在投稿中)。この論文では、水分が不足する乾季にのみ、日射強度が強い正午をピークとする時間帯に極端にチャイロキツネザルの活動が抑制されることや、水分を多く含むと考えられる多肉質植物の採食が増えること、さらに、その夜間に果実採食活動が頻繁に見られることから、乾燥条件下での日射熱ストレスに対する行動性体温調節が周日行性活動パターンを引き起こすことを示唆した。この説明は、これまで先行研究で提唱されてきたいずれの仮説とも異なるため、周日行性の適応意義を説明する新しい仮説となる。
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