2009 Fiscal Year Annual Research Report
ポスト社会主義時代のイスラームと家父長制―中央アジアの定住・農村地域を事例に
Project/Area Number |
09J03423
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
和崎 聖日 Kyoto University, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 国際情報交換 / イスラーム / 生活様式 / ウズベキスタン / ジェンダー / 民事関連裁判文書 / 音 / 日本生活学会研究論文賞 |
Research Abstract |
交付申請書に記載した「研究の目的」と「研究実施計画」に照らして、当該年度に実施した研究の成果について、その具体的内容、意義、重要性を以下で述べる。当該年度では、イスラームと生活様式の関係に関する調査・研究(以下「研究」と略記する)として、第1に、ウズベキスタン共和国ナマンガン州民事関連チュスト諸地区間裁判所(※現地語省略)にて裁判文書の収集を行った(具体的内容)。この研究の意義は、結婚や離婚など家族集団の実際的な形成と解体において、イスラームや慣習的常識、そして近代制定法がどのように関連し合っているのか、その布置の構造を見定めることにある。同様に、この研究の重要性は、ジェンダーとイスラームの関連性を検討することで、<ムスリム家父長制>といった不正確な表現を拒否しつつも、現実に存在する<男性支配>の諸形態の解明に資する点にある。第2に、調査村での音環境に着目して、<生活音>の測定を行った(具体的内容)。この研究の意義は、村落住民がどのような風土と生活条件のもと毎日いつ何をして過ごしているのか、その全体像を彼らの身体感覚に沿いながら、しかし集合性の観点から把握することにある。とくに、その行動様式の男女差に大きな関心を寄せている。この研究の重要性は、村落住民の身体・生活感覚に接近することにより、経験の内部から<家父長制>を解明するという大目標に資することである。そのほか、村落の歴史と生活様式とに関する調査・研究や論文の執筆等は、特別研究員本人が調査期間中にA型肝炎を患い、十分な研究成果を得ることができなかったため、平成22年度に持ち越された。当該年度の研究実施状況における最大の成果は、拙稿「多民族都市タシュケントの欲動-ポスト・ソヴィエト・ウズベキスタンにおける物乞い生活者像が照らすもの-」(『生活学論叢』vol.13.2008年)が日本生活学会研究論文賞を受賞したことである。
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