2009 Fiscal Year Annual Research Report
5.5TeV重イオン衝突における仮想光子を用いたクォークグルーオンプラズマの研究
Project/Area Number |
09J03434
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
洞口 拓磨 University of Tsukuba, 大学院・数理物質科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 高エネルギー原子核実験 / クォーク・グルーオンプラズマ / 量子色力学 |
Research Abstract |
LHC ALICE実験における電子対を用いた仮想光子の測定のために、ALICE実験遷移放射検出器(TRD)による電子の同定は非常に重要である。私はALICE TRD検出器を取り入れだ検出器シミュレーションを積極的に行い、特に低い横運動量領域でのALICE TRDの性能評価を行った。その結果、低い横運動領域ではALICE TRD検出器による電子識別は十分ではなく、荷電π中間子等のバックグラウンドを多く含んでしまうことが分かった。そこで、TRD後方に位置するALICE電磁カロリメーター(EMCAL)を用いた電子同定を同時に行うことで,この問題の解決を試みている。所属研究室ではEMCALの180度反対側に、EMCALと同じ構造を持ったカロリーメーターを設置すべく準備を進めている。このカロリメーターは、陽子-陽子衝突及び重イオン衝突において、互いに反対方向に放出されるジェット対を観測することを目的としている。私はこのカロリメーターの検出器シミュレーションを構築し、TRDとの電子同定における研究を推進した。また、仮想光子から生成される電子対のバックグラウンドとして互いに無相関な電子対とは別に、同一ジェット内のハドロン崩壊から生じる相関を持った電子対の量が無視出来ないことが、詳細なシミュレーションから分かって来た。そのためには、同一事象内でジェットを精度よく同定する必要があり、この新しいカロリメーターでのシミュレーションは、そのような手法を確立するのに格好の題材で合った。ジェットを再構成するに当たり、いくつかの代表的なアルゴリズムを比較検討し、最も不確定性の小さいアルゴリズムを見つけだすことに成功する等、実り多い解析となった。 LHCでは、2010年12月に重心系衝突得エネルギー900GeVめ陽子-陽子衝突に成功し、ALICE検出器において待望の物理データを収集することが出来た。データは一部を所属研究室にコピーし、他の研究機関に先駆けていくつかの主要な物理プロットを作成することに成功した。このような結果は、ALICE関連のワークショップ等で発表を行った。 シミュレーション及びデータ解析は、当初予定していた通り所属研究室における計算機群をバッチジョブシステムで統一し、計算能力を数十倍に引き上げるという目標を達成したことによって成功したものである。これらのマシンは、私だけでなく、所属研究室全員によって使用され、研究室全体め研究活動の底上げにも貢献することが出来たと自負している。
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Research Products
(12 results)