2009 Fiscal Year Annual Research Report
低エネルギー太陽ニュートリノの実時間観測による標準太陽模型の検証
Project/Area Number |
09J03461
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Research Institution | Tohoku University |
Research Fellow |
中島 恭平 Tohoku University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 素粒子実験 |
Research Abstract |
<研究目的> 本研究は世界最大級の液体シンチレータ1000トンを有するKamLAND検出器を用いて、太陽ニュートリノフラックス全体のうち7.4%を占める^7Beニュートリノの実時間観測を試みるものである。^7Beニュートリノ観測の意義は以下の通りである。 ●高統計観測が可能(KamLANDで約500events/day/kton) ●精密に実時間観測されている^8Bニュートリノに対して理論的誤差が小さく(6%)、標準太陽模型の精密検証に適している。 ●エネルギーが862keVと低いため、物質振動を起こす数MeV以上の^8Bニュートリノ(生存確率~0.3)に対して、ニュートリノの真空振動を確認できる(~0.5)。 <研究実施状況> ^7Beニュートリノ観測に対する最も困難な問題であった2MeV以下に存在する液体シンチレータ中の放射性不純物を取り除くため、2008年6月から2009年2月にかけて液体シンチレータの蒸留と高純度窒素パージによる純化が行われた。本研究によって、平成21年度において以下のような進展が得られた。 ●純化終了後、放射性不純物^<210>Bi(半減期5日)の減少を確認した。^<210>Biは半減期22.3年である^<210>Pbの娘核であり、^<210>Pbは純化によって除かれているため、この様な現象は予期されていなかった。解析の結果、KamLANDバルーンに^<210>Pbが吸着され、液の対流によって^<210>Biが染み出していることが分かった。 ●低バックグラウンド仕様の較性装置を用いて2MeV以下のエネルギー・位置の較性を行い、検出器の系統誤差を見積もった。 ●KamLAND検出器における包括的な^7Beニュートリノ解析を行い、博士論文にまとめた。161.2日のlive time、17.8kton・daysのexposureに対し、^7Beニュートリノの観測レートはニュートリノ振動を考慮した標準太陽模型の予想レートと一致した。(本結果は論文としてまだ未公表である。)
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Research Products
(2 results)