2010 Fiscal Year Annual Research Report
接触面内伝播波動のその場観察によるスティック状態とスリップ状態の遷移現象の解明
Project/Area Number |
09J03559
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
前川 覚 横浜国立大学, 環境情報研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 静止摩擦 / 動摩擦 / スティックスリップ / 前兆すべり / 剪断破壊 / 真実接触面積 / 接触面可視化システム / 可視化 |
Research Abstract |
平成22年度では、昨年度に試作した摺動面可視化システムを用いて、静止摩擦から動摩擦への摩擦遷移における摺動面の動的挙動をその場観察することにより、以下2種類の研究成果を得た。 一つ目の研究成果は、『潤滑状態に依存する2種類の摩擦遷移モードの可視化』である。Dry条件(乾燥状態)では、摩擦遷移に先行して、接触部後縁に単一のすべり破壊核が形成される。その後、剪断破壊が接触部後縁から接触部前縁へと1000m/sで高速伝播することにより、静止摩擦から動摩擦への摩擦遷移が生じる。一方、潤滑油としてpolyalphaolefin (PAO)を使用したWet条件(潤滑状態)では、摩擦遷移に先行して、接触部内部に複数のすべり破壊核が形成される。その後、剪断破壊が10-100m/sで両端方向に伝播して、互いに結合しながら接触部全域へと拡大することにより、静止摩擦から動摩擦への摩擦遷移が生じる。 二つ目の研究成果は、『静止摩擦から動摩擦への遷移時間のスケール依存性』である。単一のすべり破壊核が摩擦遷移を支配するDry条件では、静止摩擦から動摩擦への遷移時間は、接触部の大きさにともない増加する。一方、複数のすべり破壊核が摩擦遷移を支配するWet条件では、遷移時間は、接触部の大きさによらず一定となる。 以上のように、静止摩擦から動摩擦における摺動面のその場観察をすることにより、潤滑状態に依存する2種類の摩擦遷移モードを明らかにした。さらに、上記摩擦遷移モードの差異により、Dry条件とWet条件で、静止摩擦から動摩擦への遷移時間のスケール依存性が大きく異なることを見出した。これら実験結果より、接触部のスケールや表面粗さなどをパラメータとした表面設計によって、静止摩擦から動摩擦への遷移時間の制御を目指す場合、Dry条件とWet条件で、その方策が大きく異なることが明らかとなった。
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Research Products
(5 results)