2010 Fiscal Year Annual Research Report
高分子薄膜太陽電池におけるフラーレン誘導体の両極輸送機構の解明
Project/Area Number |
09J03604
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山本 俊介 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 有機薄膜太陽電池 / フラーレン / 共役高分子 / 過渡吸収分光法 / 有機エレクトロニクス / 電荷キャリア / 狭バンドギャップ高分子 / 電荷移動 |
Research Abstract |
有機薄膜太陽電池の研究において、その動作機構を理解することは設計指針の確立のために重要である。そこで、高分子薄膜太陽電池におけるフラーレン誘導体の両極輸送機構の解明を目指して研究を行った。本年度も引き続き、近赤外光を吸収できる狭バンドギャップ高分子PCPDTBTとフラーレン誘導体PCBMとのブレンド膜における電荷生成および再結合の過程を高感度過渡吸収分光法によって研究した。特に本年度はこれまで測定が行えなかったナノ秒時間域における過渡吸収測定を試みた。この目的のために新規システムを構築し、測定を行った。その結果、可視から近赤外領域にかけて幅広い波長域にわたったナノ秒過渡吸収測定が行えるようになり、いままで得られなかったこの時間領域での過渡吸収スペクトルを得ることに成功した。この結果を用いて解析を行った結果、この系におけるPCBMカチオンはPCPDTBTドメインからPCBMへのホール注入によって生成していると結論づけた。また、PCPDTBTだけではなく、これまでにPCBMカチオンの生成が確認できたMDMO-PPVブレンドについても統一的な理解を得るために光電子分光法を用いた検討を行った。それぞれの材料のHOMO準位のエネルギーおよびバンド幅を光電子分光の一種である光量子収率分光を用いて測定した。その結果、平衡状態でのPCBMカチオン分率と用いる共役高分子のHOMO準位との間に相関があることがわかった。このことを合理的に説明するために、ホール輸送の計算機シミュレーションを行った。その結果、実験的に得られた平衡PCBM分率のHOMO準位依存性をホール注入過程によって合理的に説明することができた。 以上の通り、本年度は高分子薄膜太陽電池におけるフラーレン誘導体の両極輸送機構について、現象論的のみならず、物理的描像に基づいた解明を行った。この結果、特定の系のみならず、共役高分子-フラーレンブレンド太陽電池一般に適用できる知見が得られたことは非常に意義があるものと考えられる。
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