2009 Fiscal Year Annual Research Report
珪藻の酸素発生光化学系II複合体の精製とその特性解析
Project/Area Number |
09J03668
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長尾 遼 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 光化学系II複合体 / 珪藻 / 光合成 |
Research Abstract |
珪藻は世界中の熱帯雨林が吸収する総量と同程度の二酸化炭素を吸収する水域圏で、最も重要な植物プランクトンの一種であるため、地球温暖化の防止に大いに貢献しているといわれている。しかしその重要性にもかかわらず、光合成機構、特に光化学系II複合体(PSII)に関する知見は皆無であった。これまでに、海水産の中心目珪藻Chaetoceros gracilisから酸素発生活性を保持した状態のPSII(crude PSII)の単離に成功しており、その標品を用いて様々な生化学的解析を試みてきたが、crude PSIIは非常に失活しやすく不安定であるということが明らかになった。そこで本年度は、(1)このcrude PSIIをさらに精製し珪藻から安定なPSII標品(pure PSII)を調製すること、(2)得られたcrude PSIIとpure PSIIとを比較することでcrude PSIIがどのように不安定であるか、という2点に着目し研究を進めた。まず、crude PSIIをTriton X-100で可溶化後、陰イオン交換カラムクロマトグラフィーにかけpure PSIIの調製を試みた。精製されたpure PSIIは集光性色素タンパク質の大部分が除去されており、酸素発生活性はcrude PSIIの約2.5倍もの数値を示す標品であった。次に、得られたpure PSIIとcrude PSIIを25℃,暗所でインキュベートし、5,10,20,30,60,180,360分後のそれぞれで酸素発生活性と吸収スペクトルの測定、およびポリペプチド組成の分析を行った。その結果、crude PSIIでは、暗所でインキュベートすることにより酸素発生活性の失活、クロロフィルやカロテノイドの消失、PSII subunitの分解などの現象が確認され、これは珪藻特異的なものであった。現在、crude PSIIでみられた失活要因を調査中である。
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