2010 Fiscal Year Annual Research Report
珪藻の酸素発生光化学系II複合体の精製とその特性解析
Project/Area Number |
09J03668
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長尾 遼 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 光化学系II複合体 / 珪藻 / 光合成 |
Research Abstract |
珪藻は世界中の熱帯雨林が吸収する総量と同程度の二酸化炭素を吸収する水域圏で、最も重要な植物プランクトンの一種であるため、地球温暖化の防止に大いに貢献しているといわれている。しかしその重要性にもかかわらず、光合成機構、特に光化学系II複合体(PSII)に関する知見は皆無であった。これまでに、海産の中心目珪藻Chaetoceros gracilisから酸素発生活性を保持したPSII (crude PSII)の単離(Nagao et al.2007 BBA)、さらにcrude PSIIからアンテナタンパク質を除去した標品(purified PSII)の調製にも成功している(Nagao et al.2010 BBA)。前年度までに、珪藻PSIIに結合した5種類の表在性タンパク質PsbO, PsbQ', PsbV, Psb31, PsbUの単離精製に成功していたため、今年度は再構成実験によりそれらの結合様式と機能解析を試みた。purified PSIIから表在性タンパク質を除去し、精製した表在性タンパク質を様々な組み合わせで再構成した。その結果、PsbO, PsbQ', Psb31はPSII膜タンパク質に対し、直接結合することが明らかとなった。一方、PsbV, PsbUは他の4種の存在下で結合することが明らかとなった。興味深いことに、PsbOが結合していなくともPsb31さえ結合していれば、酸素発生することが明らかとなった。他の光合成生物では、PsbOが結合していなければ酸素発生しないことがすでにわかっており、この結果は珪藻PSIIが他種と異なる可能性を示唆している。以上を論文として纏めた(Nagao et al.2010 The Journal of Biological Chemistry 285 : 29191-29199)。
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