2010 Fiscal Year Annual Research Report
ヨーロッパの市民性教育カリキュラムについての研究―「多重市民性」の視点から―
Project/Area Number |
09J03677
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
橋崎 頼子 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 市民性教育 / 多重市民性 / カリキュラム / アイデンティティ / グローバル化 |
Research Abstract |
グローバル化が進む現在、市民性の育成を「国民」か「地球市民」かの二者択一的視点から構想したり、その要素を、国家から付与される権利と義務に限定して考えることには限界がある。このような問題意職に基づき本研究では、複数の地理的レベルとアイデンティティの要素を含む「多重市民性(multiple citizenship)」の視点から、イギリスおよびヨーロッパ評議会の市民性教育のカリキュラム分析を行うことを通して、グローバル時代における市民性教育の特徴を明らかにすることを目的としてきた。 2年目は、1年目の研究成果を学会や研究会などで発表を行い、国内外の研究者との意見交換を通して、研究結果の批判的検討を行った。1年目は、イギリスの市民性教育は国民的アイデンティティを重視しているのに対し、ヨーロッパ評議会の市民性教育は普遍的な価値の探究とそれに基づくルール形成を促していることを明らかにし、両者を支える理論的基盤が異なることを示した。しかし、ヨーロッパ評議会の市民性教育を支える普遍性とはだれにとっての普遍性なのか、イスラム教徒や移民など異なる背景を持つ生徒にとってどのような意味を持つのか、ヨーロッパ評議会自体の限界として既存のルールを批判的に再構築しようとする視点が弱いのではないか、欧州の事例が日本の文脈にどのように応用可能かの検討が望まれるという批判を受けた。 これを受けて今後は、(1)まず、イギリスとヨーロッパ評議会の市民性教育の特徴と限界についてより文脈に沿った形で分析を行う。具体的には、イギリスの中等学校、およびヨーロッパ評議会の拠点となっているチューリッヒ大学や実践の場であるボスニア・ヘルツエゴビナの中等学校での調査を通して、多重市民性を育成する教育実践についての考察を行う。(2)また、これまでの研究結果が日本の学校教育の文脈でどのように応用可能かについて、日本での実践調査や教師へのアンケート調査を通して明らかにしていく。
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Research Products
(4 results)