2009 Fiscal Year Annual Research Report
ヨーロッパの市民性教育カリキュラムについての研究―「多重市民性」の視点から―
Project/Area Number |
09J03677
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
橋崎 頼子 Kobe University, 総合人間科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 市民性教育 / カリキュラム / グローバル化 / 多元的アイデンティティ / イギリス / ヨーロッパ評議会 |
Research Abstract |
本研究は、グローバル化時代の市民性を育成するカリキュラムの特徴について明らかにすることを目的とする。具体的には、イギリスとヨーロッパ評議会で開発された代表的な市民性教育の教科書や授業計画を、「多重市民性」の視点から分析・比較することで、その目標、内容、方法の原理の解明を目指す。ここで「多重市民性」とは、地域、国家、グローバルという複数の地理的レベルでの「権利」と「責任」を持ち、流動的な複数の「アイデンティティ」を持つことを意味する。現在までの主な研究成果は以下の3点である。 1.イギリスとヨーロッパ評議会の市民性教育は、両者とも、「地域・国家が付与する権利および人権」、「複数の地理的レベルの社会問題解決に参加する責任」、「多様性の尊重」という要素から成っていた。 2.イギリスとヨーロッパ評議会の市民性教育は、社会の「多様性」と「統合」について、異なる目標と内容を持っていた。(1)前者は、国内の多様性を尊重する一方、それをゆるやかな国民的アイデンティティによって統合することを目指していた。そのため学習内容は、国内の多様性の学習に基づき、「イギリス人らしさ」を定義させる活動、あるいは、地域、国家、グローバルの各文脈の社会問題解決に取り組ませる活動であった。(2)一方、後者は、国内に限定されない個人の多様なアイデンティティを重視し、多様性を法形成過程への参加によって統合することが目指されていた。そのため学習内容は、個々人の多様なアイデンティティの学習と、人々が共有可能な法に関する討議、特定の地理的文脈に限定されない仮想空間における社会問題解決に取組ませる活動であった。 3.教育方法は、両者とも、既存のアイデンティティ概念や社会制度を批判的に分析し再構築することを促す、批判的討論、反省、社会参加が用いられていた。
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Research Products
(4 results)