2009 Fiscal Year Annual Research Report
神経細胞膜・特殊ラフト領域の動的構造と機能の解明: 1分子追跡による研究
Project/Area Number |
09J03739
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
根本 悠宇里 Kyoto University, 物質-細胞統合システム拠点, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | プリオンタンパク質 / Thy-1 / 1分子蛍光観察法 / ラフト領域 |
Research Abstract |
神経細胞の細胞膜上での特殊ラフト領域の形成機構とその機能の理解のため、ラフト分子であるGPIアンカー型タンパク質のプリオンタンパク質(PrP)とThy-1をターゲット分子とし、1分子蛍光観察実験を行っている。この2種類のタンパク質は、神経細胞膜上の主要なGPIアンカー型タンパク質であるにもかかわらず、その機能にはまだ不明な点が多い。 細胞膜上でのPrPとThy-1の挙動を1分子レベルで調べるため、まず、有機蛍光色素を直接付加したFab抗体を用いて標的タンパク質をラベルし、全反射蛍光顕微鏡による1分子観察を行った。このとき、神経細胞膜上においてFab抗体でラベルされた分子が拡散している様子が観察できた。しかし、この方法だとカバーグラス上にも非特異的に接着するFab抗体全てを取り除くことは難しく、真の分子の運動がバックグラウンドのノイズによって隠されてしまう可能性があると考えた。 この問題の解決策として、GFPタグを付加したPrP分子とThy-1分子(GFP-PrP、GFP-Thy-1)のDNAコンストラクトを作製し、これを初代培養神経細胞にトランスフェクションして、1分子蛍光観察を行った。この方法を用いた場合、Fab抗体を用いた場合に見られたようなバックグラウンドのノイズが抑えられるとともに、1つの分子に正確に1つの蛍光分子を付加することができた。GFP-PrP、およびGFP-Thy-1それぞれの細胞膜上での分布を統計的に解析したところ、その分布はランダム分布ではなく、有意にクラスター化しているという結果を得た。このクラスターが細胞膜上の特殊ラフト領域と関係しているのではないかと考えている。 Roger Morrisらによって、免疫電顕観察から「PrPとThy-1はそれぞれ異なるドメインに存在する」と報告されている。これを生細胞で確かめるため、私は、同一細胞膜上のPrPとThy-1を同時に1分子観察する実験系を立ち上げた。具体的には、一方のタンパク質をACPタグフユージョンタンパク質とし、共トランスフェクションした同一の神経細胞中での2色同時1分子蛍光観察を行った。トランスフェクション効率の向上、1分子蛍光観察に適した発現レベルの調整といった課題があったが、現在ではほぼ実験条件を確定させ、データ数を増やすための観察とデータの解析を進めている。また、コントロールとして、我々の研究室の以前の研究から、すでに非ラフト分子であることが分かっている脂質分子(Cy3-DOPE)の観察にも着手している。今後は、ラフト領域の形成に関わっているとされる糖脂質やコレステロールといった、他の分子についても観察を行う予定である。
|