2009 Fiscal Year Annual Research Report
レズビアン・ゲイの「家族」―「家族」へのインタビュー調査にもとづく社会学的考察
Project/Area Number |
09J03758
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
三部 倫子 Ochanomizu University, 大学院・人間文化創成科学研究科, 特別研究員DC2
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Keywords | レズビアン・ゲイ・バイセクシュアルの「家族」 / レズビアン・ゲイ・コミュニティ / セルフヘルプグループ / ジェンダー / セクシュアリティ |
Research Abstract |
本研究の目的は以下の二つである。1)日本のレズビアン・ゲイ・バイセクシュアル(以下「LGB」)、LGBの「コミュニティ」、LGBを子に持つ親との関係から「家族」とは何かを問うこと、2)ジェンダー/セクシュアリティの交錯の力学が、「家族」を磁場にどのように生じているのかを明らかにすることである。 文献調査からLGBにとっての「家族」とは、LGBから見た親・きょうだいなどの異性愛家族に加え、LGBのカップルや複数のLGBネットワークを含んでいることが示唆された。これを受け、a)LGBと、LGBを子に持つ親へのインタビュー調査、b)LGBを子に持つ親が参加する「家族と支援者の会」(以下「家族会」)、LGB「コミュニティ」への参与観察を実施した。結果、従来の研究では、親のLGBへの抑圧的な側面が強調されてきたが、親たちが「縁者のスティグマ」を被るがゆえにさまざまな戦略で、スティグマに働きかける様子が明らかとなった。母親は「自分の育て方が悪かったのではないか」と自責の念を抱き、ジェンダーの面から負担が大きいことが示唆された。こうしたスティグマへの働きかけが、家族会への参加動機となった親もいるが、家族会は社会ヘクレイム申し立てをするだけではなく、親とLGBそれぞれを橋渡しする役割を担っていた。LGBは親からの承認の可否によって、人生での重大なイベント(恋人との同居、就職、入院など)が左右されていた。 本研究は、「家族」の定義を根本から見直す批判的視座を提供する点で、既存の家族研究に対して重要な意義をもつ。さらに、LGBの間に横たわるジェンダー/セクシュアリティの力学の差によって、LGBそれぞれの「家族」経験が異なることを明示し、ジェンダー研究、レズビアン・ゲイ・スタディーズ、クィア研究の発展にも寄与するものである。
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