2009 Fiscal Year Annual Research Report
非断熱電子波束動力学による強レーザー場中の分子のイオン化素過程の解明
Project/Area Number |
09J03778
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
菅野 学 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 非断熱動力学 / 電子波束 / イオン化 / 素過程 / 強レーザー場 / 電子衝突 / 溶媒和電子 |
Research Abstract |
超短強レーザーパルスと相互作用してアト秒の時間スケールで進行する分子のイオン化など、分子の電荷の変化を伴う電離現象における電子と原子核のダイナミクスは従来の量子化学的手法では扱うことのできなかった化学的に重要な問題である。これらの問題を扱うために、電子と原子核の両方の自由度を量子波束で表現して分子の非断熱ダイナミクスを適切に評価するnon-Born-Oppenheimer Quantum Chemistry(non-BOQC)法を分子からの電子の脱離や分子と電子の結合を伴う広義の電離ダイナミクスに拡張するという課題に取り組んだ。本年度の成果をまとめると、大きく次の5つが挙げられる。1.外場の存在しない場合に限定されていた従来のnon-BOQC法の理論形式を、強レーザー場誘起イオン化を含む一般の電離現象における非断熱電子波束ダイナミクスを扱える形式に拡張した。2.波束の中心の運動を記述する古典軌道の転回点におけるnon-BOQC法の特異点問題を解決した。3.1自由度問題に限定されていたnon-BOQC法の適用範囲を、局所基準座標の概念を導入することによって多自由度の電離現象にまで拡張した。4.拡張non-BOQC法を一般の多原子分子に適用するための汎用数値計算プログラムを開発した。5.作成した数値計算プログラムを利用して、拡張non-BOQC法に基づく2次元Coulombポテンシャル上のGauss波束の時間発展シミュレーションが可能であることを確認した。これらの成果から、多自由度の電離電子ダイナミクスを半古典力学に基づいて評価する画期的な手法であるnon-BOQC法の理論的基礎とその数値計算法を構築することができた。
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