2010 Fiscal Year Annual Research Report
非断熱電子波束動力学による強レーザー場中の分子のイオン化素過程の解明
Project/Area Number |
09J03778
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
菅野 学 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教
|
Keywords | 電子動力学 / 非断熱相互作用 / イオン化 / 電離 / 素過程 / 強レーザー場 / 電子衝突 / 溶媒和電子 |
Research Abstract |
超短強レーザーパルスと相互作用してアト秒の時間スケールで進行する分子のイオン化など、分子の電荷の変化を伴う電離現象における電子と原子核のダイナミクスは従来の量子化学的手法では扱うことのできなかった化学的に重要な問題である。これらの問題を扱うために、電子と原子核の両方の自由度を量子波束で表現して分子の非断熱ダイナミクスを適切に評価するnon-Born-Oppenheimer Quantum Chemistry(non-BOQC)法を分子からの電子の脱離や分子と電子の結合を伴う広義の電離ダイナミクスに拡張するという課題に取り組んだ。当該年度は、1自由度問題に限定されていたnon-BOQC法の適用範囲を多自由度の電離現象にまで拡張することに取り組んだ。その成果をまとめると、大きく次の4つが挙げられる。1.多自由度のnon-BOQC法における波動関数が従う運動方程式を行列形式で定式化した。2.波動関数の時間発展に必要な速度勾配(velocity gradient)行列が従う運動方程式を導出し、古典軌道の転回点においてそれを逆行列へと変換することにより、速度勾配行列の数値的に安定な計算手法を開発した。3.non-BOQC法の特異点問題(波動関数を記述するパラメーターの発散)を多自由度問題においても部分的に解決した。4.具体的な系への適用として、強レーザー場と相互作用する水素原子やヘリウム原子における電子の運動(古典軌道)を安定に計算する数値計算プログラムを開発した。これらの成果から、多自由度の電離電子ダイナミクスを半古典力学に基づいて評価する画期的な手法である拡張non-BOQC法の理論とその数値計算法を開発し、それを強レーザー場誘起イオン化などの一般の多原子分子の電離現象に適用するための基礎を構築した。
|
Research Products
(1 results)