2011 Fiscal Year Annual Research Report
魚類補体におけるC3アイソタイプの機能分化とC3多重化が感染防御に果たす役割
Project/Area Number |
09J03793
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
一木 智子 九州大学, 農学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 自然免疫 / 魚類免疫 / 補体 / C3 / C3アイソタイプ / C3複合体 |
Research Abstract |
補体系は宿主生体防御機構のひとつで、非自己細胞の認識、異物細胞の破壊、感染部位への白血球の誘引、貪食作用の促進、B細胞の活性化など多様な生体防御機能を担う。約30種の液性タンパクと膜型タンパクから構成され、その中でもC3は上記生理活性の多くを媒介する多機能性生体防御因子である。魚類補体系の特徴は中心成分C3が遺伝子重複により多重化し、通常の「His 型 C3」に加えて「Non-His 型 C3」を持つことである。本研究は、2種の異なるC3アイソタイプのコイ生体防御機構における役割をタンパク質レベルで解明し、魚に最適な予防医学の確立に貢献することを目的としている。 コイでは、His 型 C3-H1と Non-His 型 C3-Sが血清中の主要なアイソタイプとして存在し、これまでの研究で2つのC3アイソタイプが様々な標的異物に対して異なる結合スペクトルを示すことが明らかになった。また、大変興味深いことに、2種のC3アイソタイプは、コイ血清中で複合体を形成していることが示唆された。これまで、どの生物種からもC3同士の複合体は報告されていなかったため、今年度は新奇C3複合体の同定とその生体防御機能の解明に注力した。 その結果、(i)C3複合体はコイの生理的条件下において血清から分離でき分子量約440kDaの2量体を形成していること、(ii)複合体の形成に二価イオンを要求しないこと、(iii)精製したC3-H1とC3-Sから複合体を再構築できること、(iv)C3複合体中に未活性化型C3-H1が含まれていることが明らかになった。これらの結果から、コイC3複合体はこれまで報告されているC5転換酵素の様な複合体とは全く組成が異なることが示唆された。さらに、再構築したC3複合体がC3完全除去血清の溶解活性を回復できたことから、この複合体が溶解反応に関与することが示唆された。新奇C3複合体のさらなる機能の解明は、魚類補体系におけるC3多重化の意義を解明する重要な糸口となると考えられる。
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Research Products
(2 results)