2009 Fiscal Year Annual Research Report
魚類補体におけるC3アイソタイプの機能分化とC3多重化が感染防御に果たす役割
Project/Area Number |
09J03793
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
一木 智子 Kyushu University, 農学研究院, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 自然免疫 / 魚類免疫 / 補体 / C3 / アイソタイプ |
Research Abstract |
硬骨魚類の補体系の特徴は、中心成分であるC3が遺伝子重複により複数のアイソタイプとして存在し、通常のHisタイプのC3(分子内にチオエステルの開裂と異物への結合反応を触媒するヒスチジンを持つ)に加え、non-HisタイプのC3(触媒性Hisを持たない)が存在することである。 本研究の目的は、魚類C3アイソタイプの反応機構とその生体防御における意義をC3アイソタイプの機能の違いに着目し明らかとすることである。 今年度は、Hisタイプ(C3-H1)とnon-Hisタイプ(C3-S)のコイC3アイソタイプの異物への結合能や、異種赤血球に対する溶解経路活性化能を比較する機能解析を行った。魚病細菌3種、自己細胞2種を含む計12種の標的に対する各C3アイソタイプの結合特異性をフローサイトメトリーにより解析したところ、non-HisタイプのC3-Sが幅広い異物に対して結合できることが明らかとなった。また、各C3アイソタイプ特異的なモノクローナル抗体(抗C3-H1抗体,抗C3-S抗体)を用いて、ウサギ赤血球もしくは感作ヒツジ赤血球に対する溶血活性を阻害したところ、抗C3-S抗体を血清に添加すると、溶血活性を完全に失活させることが判明した。ざらに、コイ血清中から目的のC3アイソタイプを除去した血清の作製を試み、作製段階の各C3アイソタイプ除去血清を用いて異種赤血球に対する残存溶血能を測定したところ、C3-S除去血清で溶血活性の大幅な減少が見られた。 これらの結果から、魚類の補体系では、通常のHisタイプのC3よりも魚類に特有なnon-HisタイプのC3が重要な役割を担っていることが示唆された。 哺乳類とは異なる魚類に特有な生体防御システムが明らかとなることで、養殖業における魚病対策に有用な知見をもたらすことが期待できる。
|
Research Products
(2 results)