Research Abstract |
当該年度において,本研究は,心臓壁の変位推定に関する重要なパラメータ(相関窓の大きさ)の最適値を様々な深さや信号対雑音比などの影響を考慮して普遍的な値として決定した.提案した相関窓の大きさの最適値は,単に大きさとして評価したのではなく,普遍的な大きさ(超音波ビームの焦域)を基に決定したことに独自性があると考える.相関窓は研究者によって様々な大きさを用いており,その大きさは異なる.しかし,相関窓の大きさは深さと雑音に依存するが,超音波の焦域の大きさに対して一定であることが本研究によって分かった.この結果から,相関窓の大きさは,予め超音波の焦域と信号対雑音比を深さごとに測定しておくことで,最適な相関窓幅を設定することが可能であることを意味する. 深さと信号対雑音比に着目した点は,特に心尖長軸断面の速度・変位推定を高精度に行うことを目的としている.左室長軸断面では,心臓壁の位置が深さ約40,80ミリ付近に位置するのに対して,心尖長軸断面は,深さ方向に連続的に存在する.さらに,左室長軸断面に比べて,心尖長軸断面は,信号強度が弱い.そのため,前年度に左室長軸断面に関する相関窓の最適化を行ってきただけでは,不十分だと考えた.そして,最適化した相関窓幅を用いて様々な断面(左室長軸断面および心尖長軸断面)の心臓壁の高時間分解能な速度・変位計測を高精度に行うことが可能となった. 今後は,推定した速度・変位結果から電気信号に対して心筋がどのように反応するのかなど,心筋運動の生理学的解明につながる結果を示していかなければならないと考えている. また,研究成果を学会発表や学会誌への論文投稿を積極的に行い,多くの分野の研究者との討論やそこから生まれる新たな課題の発見の機会を設けようと心掛けていた(国内学会6件および論文1件).
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