2009 Fiscal Year Annual Research Report
ソフトマテリアルの配向秩序形成における幾何形状効果
Project/Area Number |
09J03887
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
長谷川 偉創 Hokkaido University, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ソフトマター / 配向秩序 / 曲率効果 |
Research Abstract |
本年度においては平衡系における配向秩序と基盤幾何との相関を解析し、連続体理論を用いた解析において以下の成果を得る事ができた。 (1)膜変形効果を記述するための手法を整備。 ネマチック液晶およびスメクチック液晶の連続体模型における弾性エネルギーの式に計量テンソルおよび曲率テンソルを導入し、曲面上での弾性応答関数を定式化した。 (2)ガウス曲面上での数値解析。 得られた弾性応答関数をガウス型の関数で表わされる曲面(ガウス曲面)に適用し、+1/-1のチャージを持つ配向欠陥の安定位置について数値解析を行った。ガウス曲面は配向欠陥の存在を保証するトポロジカルな条件がないため、ガウス曲率と配向欠陥の相関を解析するのに適している。 解析の際には、配向欠陥が温度によって励起されるような高温域では、局所的な配向ゆらぎの相関長が有限となることから、配向欠陥に寄与するガウス曲率分布を欠陥の中心から相関長程度の距離にあるものだけに限定した。 その結果、ガウス曲面が配向ゆらぎの相関長よりも十分に大きく傾斜が緩やかな場合には、配向欠陥はチャージの正負に関わらず、ガウス曲面の変曲点付近に安定に分布することがわかった。またガウス曲面の傾斜が大きくなるに伴い、-1のチャージを持つ配向欠陥では変曲点付近での弾性エネルギーが高まり、変曲点の上下に分布領域が移動することがわかった。これらの安定位置の安定性は温度ゆらぎの千倍程度であるので、現実の系で十分観測可能と考えられる。この結果は、低温域で+1の配向欠陥がガウス曲面の頂点に引き付けられ、-1の配向欠陥はガウス曲面から排斥されるというこれまでの研究結果とは異なり、配向欠陥の安定位置は欠陥に含まれるガウス曲率の分布の仕方に強く依存することを示したものとして重要である。
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