Research Abstract |
特別研究員申請時の年次計画(1年目)を鑑み,本年度はタクラマカン砂漠を起源とした長距離輸送ダスト(Dust Veil)の様態解明と,全球エアロゾル輸送モデルへのデータ同化手法導入の二点に重点を置いて研究を行った. まず,長距離輸送ダスト(Dust Veil)の検出と輸送経路に関する研究であるが,当研究では領域物質輸送モデルRC4,全球エアロゾル輸送モデルSPRINTARS,CALIOP衛星搭載Lidar,国立環境研究所地上Lidarネットワークを統合させた解析を行い,その発生から輸送までの解析を行った.その結果,タクラマカン砂漠の位置するタリム盆地の特異な地形がDust Veilの生成と太平洋を横断する長距離輸送に重要な役割を果たしていることが解明された.また,タクラマカン砂漠から発生したダストは,高度6・10kmの高々度を大西洋まで輸送されていることがわかった.これらの結果は3つの国際ジャーナル誌の論文としてまとめられ,発表された.特にNature Geoscience(Uno et al.2009;申請者は第三著者)に発表された論文では,タクラマカン起源のダストが約二週間かけて地球を一周する様子を初めて明らかにした.さらに,中国西安で行われたInternational Symposium on Atmospheric Light Scattering and Remote Sensingにおいて,招待講演を行った. 次に,全球エアロゾル輸送モデルへのデータ同化手法の導入であるが,本研究では全球エアロゾル輸送モデルSPRINTARSを用いた.同化手法には,現業気象予報に用いられているアンサンブルカルマンフィルタ(EnKF)と4次元変分法(4D-Var)の両者を選択した.研究初年度である本年度は,両同化手法の導入と同化実験を行った.EnKFについては,一ケ月の長期間同化実験に成功し,その成果を12月にSan Franciscoで行われたAGU Fall Meetingで発表した.今後より長期間の同化を行い,論文としてまとめる予定である.4D-Varの導入も適宜開始しており,来年度は両同化手法の比較,組み合わせた同化手法の開発に取り組む予定である.
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