2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J03939
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
杉田 浩崇 Hiroshima University, 大学院・教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 後期ウィトゲンシュタイン / 人格概念 / 内面の文法 / 道徳的実在論 / アスペクト知覚 |
Research Abstract |
本研究の目的は、後期ウィトゲンシュタインの哲学を手がかりに、被教育者を人格として捉える見方がいかに形成され、変容するのかを明らかにすることにある。 本年度は第一に、被教育者を人格と捉えることの両義性をより明瞭に考察するために、人格概念の主要な要素である「内面」の機能を考察した。第二に、「人格」の立ち現れの共同体論的な側面とその倫理的な側面を見て取るために、近年の道徳的実在論における客観性概念について検討した。とりわけ近年注目を集め、ウィトゲンシュタインの規則論も論じているJ.マクダウェルの議論を中心に検討した。 本年度で得られた知見は、次の二点である。第一に、後期ウィトゲンシュタインを手がかりにすることで、言語ゲームにおける「内面」の位置価が明らかとなった。「内面」はその実在性によってではなく、我々が営む言語ゲームを基盤としてその表出のうちに見出される。だが、それと不可分に、「内面」はその「文法」から内側に位置しており、不確実性を内包する。「内面」を考察したことで、人格の立ち現われとその見方の変容が有する両義性をより実践的なレベルで解明できる可能性が示唆された。第二に、マクダウェルの議論から、道徳的判断が共同体の規範に依拠しながらも、同時に事実の知覚をめぐって論争し得ることが明らかとなった。これにより人格との倫理的な関係を単に主観的な知覚によってではなく、共同体における他者との知覚における差異の問題として考察する可能性が示唆された。以上から、今後はこれまで取り組んできたウィトゲンシュタインのアスペクト知覚の議論をより発展させる。
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Research Products
(3 results)