2009 Fiscal Year Annual Research Report
組みひも群・写像類群の順序構造とその結び目理論・三次元接触幾何への応用
Project/Area Number |
09J03953
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 哲也 The University of Tokyo, 大学院・数理科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | Braid group / invariant ordering / knot theory |
Research Abstract |
本年度は、組みひも群の不変全順序の組み合わせ的・代数的な性質を詳細に調べた。特に、(有限)Thurston型順序と呼ばれる双曲幾何を用いて定義される組みひも群の特別な順序の族に対して、これらの順序を正組みひものなすモノイドあるいは双対正組みひものなすモノイドに制限したときに得られる整列集合の構造について調べ、その順序型を決定した。また、各(有限)Thurston型順序に対し、順序構造を反映した正組みひも、双対正組みひもの標準形を得た。これらの標準形は、Dehornoy、Fromentinらにより定義された交代標準形・回転標準形の一般化であり、Dehornoy順序と呼ばれる組みひも群の標準的な順序に対する結果の拡張となっている。特に、この標準形を用いた記述から、(有限)Thurston型順序は組みひも群の語全体の集合に定義される二つの辞書式順序の合成として捉えられることを示し、Thurston型順序の組み合わせ・代数的な新しい記述を与えた。また、この標準形を用いて、与えられた二つの組みひもの順序を比較する多項式時間のアルゴリズムなどを得た。 また、組みひも群の順序構造のトポロジーへの新しい応用として、組みひも群の順序から定まるDehornoy floorと呼ばれる値を用いて、結び目、絡み目の組みひも指数を評価する式を得た。この評価はこれまでに知られている、結び目の多項式不変量(HOMFLY多項式)を用いた評価式とは異なる手法により得られたもので、具体的な計算が非常に容易であるという特徴を持つ。さらに、この結果を用いて、順序が十分に大きいあるいは小さい組みひもにより表示されているような結び目・絡み目の分類問題が組みひも群の共役問題に同値であることを示し、このようなクラスの結び目・絡み目の分類を与えた。このような結び目・絡み目全体は、結び目・絡み目全体の中の非常に大きな部分集合をなすため、この結果は、結び目の分類が多くの場合、組みひも群の代数的な問題に帰着されることを示している。
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Research Products
(2 results)