2009 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙環境で光学異性体の偏りは実現可能か? 円偏光放射光による生命の起源の研究
Project/Area Number |
09J03972
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
泉 雄大 Kobe University, 人間発達環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 自然円二色性 / 円偏光 / 生命の起源 / ホモキラリティー |
Research Abstract |
通常の化学合成では,アミノ酸はL体とD体がほぼ等量混ざったラセミ体(L/D=1)で生成するが,マーチソン隕石などいくつかの隕石の中からL体がD体よりも多い状態で発見された.本研究では,円偏光をエネルギー源として生じる不斉分解反応によって隕石から発見された偏りが物理化学的に説明可能かを確かめることを目的に実験を行った. 不斉分解反応はアミノ酸が左右の円偏光に対して異なる吸収断面積を持つこと(自然円二色性)によって生じる.そこで効果的に不斉分解が起こるエネルギー領域を探るために,不斉分解反応の前提となる自然円二色性スペクトルを測定した.測定は大型放射光施設SPring-8のビームラインBL25SUにおいて行った.試料は真空蒸着法によって作成したアミノ酸の蒸着膜(固相)を用いた.蒸着膜に左右の円偏光を照射し,自然円二色性スペクトルを得た. 一般に固相の自然円二色性スペクトル測定は,線二色性や線複屈折といった成分が自然円二色性に紛れ込んでしまうため非常に困難である.しかし,われわれは試料を回転させて測定したデータを平均することで,線二色性や線複屈折を除去することに成功し,アスパラギン酸の自然円二色性スペクトルを軟X線領域で測定することに世界で初めて成功した.不斉反応の起きやすさを決定する因子である異方性因子の大きさは,これまでに報告されているアミノ酸の異方性因子の4~25倍と極めて大きな値を示すことがわかった.本研究で測定した自然円二色性スペクトルを用いることで生体アミノ酸の円偏光による不斉反応を定量的に議論することが可能となり,仮説の検証に非常に重要なデータを取得することができた.
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Research Products
(6 results)
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[Presentation] アスパラギン酸の軟X線自然円二色性スペクトル2010
Author(s)
泉雄大, 田中真文, 今津亜季子, 三本晶, 田邊真依子, 中川和道, 田中真人, 安居院あかね, 室隆桂之
Organizer
第23回日本放射光学会年会・放射光科学合同シンポジウム
Place of Presentation
イーグレ姫路(兵庫県)
Year and Date
20100106-20100109
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