2009 Fiscal Year Annual Research Report
パイロキシン-ガーネット相転移カイネティクスと沈み込むスラブの非平衡ミネラロジー
Project/Area Number |
09J03975
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
西 真之 Kyushu University, 大学院・理学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 相転移カイネティクス / マントル遷移層 / メージャライト / ダイヤモンド / ガーネット |
Research Abstract |
海溝から地球深部に沈み込む海洋プレートは、マントル対流における代表的な下降流である。その密度や粘性はマントル対流を理解する上で重要な鍵となる。そのため、沈み込む海洋プレートの鉱物構成の決定が、相平衡実験により繰り返し行われてきた。しかし、沈み込むプレートは比較的低温の環境であり、物質の反応速度が遅いため、相平衡が成り立たない可能性がある。本研究では、より現実的な沈み込む海洋プレートの鉱物構成を知るために、沈み込むプレートの代表的鉱物であるpyroxeneとgarnetの相転移速度の決定を行なう。 今年度は、マントル遷移層領域に沈み込んだプレート内で起こると考えられるpyroxene-garnet相転移の速度の決定を目的とした。この相転移は、garnet粒内のアルミニウム、シリコンといった原子の拡散現象により進行する。まず地球深部条件に対応する高温高圧環境を実験により再現し、pyroxeneとgarnetを化学反応させた。その後、回収試料のガーネットの化学組成を透過型電子顕微鏡により定量分析し、シリコン、アルミニウムの拡散プロファイルを得た。この結果からpyroxene-garnet相転移速度とその温度依存性を決定することに成功し、沈み込むプレート内で実際にこの相転移がどの程度進行するかの推定が可能となった。この相転移は、沈み込む海洋プレートの温度ではほとんど進行せず、プレート内の鉱物構成はこれまで平衡論で考えられてきたものと比べ大きく異なり、低密度なpyroxeneが地球深部まで残ると示唆される。
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