Research Abstract |
【プロセス3:小惑星の熱変成】 1年目の研究により,加熱脱水を受けたと判明した20個の炭素質コンドライト隕石について,より詳細な観察と考察を行った.特に熱に敏感な層状珪酸塩鉱物の観察に基づいて,これら20個の隕石の熱変成の程度を以下の3つのグループに分類することができた. 1.強い加熱:層状珪酸塩鉱物が脱水分解し,更に加熱され,2次のカンラン石,輝石が生成している 2.中程度の加熱:層状珪酸塩鉱物が脱水分解し,2次のカンラン石が生成されつつある 3.弱い加熱:層状珪酸塩鉱物が脱水分解しつつある 数としては,弱い加熱を受けた隕石が最も多い.強い加熱を受けたグループに属する隕石は,2つ発見されたが,両者とも層状珪酸塩鉱物の化学組成,全岩の酸素同位体組成は,弱い加熱を受けた隕石とは大きく異なっていた。これは,これまで発見されてきた隕石グループとは異なる,新たな隕石グループの発見を示唆しているかもしれない. また,韓国極地研究所にて,水を含む鉱物の酸素同位体組成分析のシステム開発にも取り組んでいる.このシステムを使用した結果に基づくと,これまで推測されてきた太陽系始原水の組成に,大きなばらつきがある可能性が示唆される.これは,始原的小惑星の進化のみならず,太陽系の進化にも直結する非常に大きな意味を持つ.今後は,酸素同位体組成分析の精度向上に取り組み,この仮定を十分に検討していきたい. 【プロセス1:小惑星の形成】 受入教員である中村智樹准教授と共に,小惑星探査機はやぶさの回収したイトカワ表面試料の初期分析チームの一員として,2011年1月より人類初の小惑星物質の分析を行った.この結果は,2011年3月アメリカで行われた国際月惑星科学会議で報告された.この分析の結果,これまで広く研究されてきた隕石が,確かに小惑星から飛来したものであると初めて確認された.これは隕石研究にとって非常に大きな成果である.
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