2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J04097
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
植原 亮 日本大学, 文理学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 哲学的自然主義 / 実在論 / 認識論 / 自然種 / 知識 / リテラシー / エンハンスメント |
Research Abstract |
本年度のもっとも主要な研究成果は、自然主義的な観点からの実在論・認識論の体系を「自然種の一般理論」として包括的に提示したことである。それは、具体的な手順としては、J・ロックに始まり現代に至る自然種の理論の歴史的変遷をたどったうえで、そこから得られた枠組みに理論的な整備をほどこし、さらに実在性をめぐる概念的問題を解決することで、一般理論として提示されたものである。そしてさらに、この一般理論を、生物種や人工物、知識といった具体的領域に適用してみせ、またそのつど生じる問題点を解決することによっても、その経験的妥当性を示すことができたと考えられる。自然種の本性を明らかにしつつ、個別的な事例における問題を解決しながら、哲学的自然主義の一貫した体系を提示するというこの成果は、国内外を問わず、類例のないものであり、またここで示された理論が、今後、認知科学や脳神経科学、社会科学等における探究の対象についても適用の可能性を有しているという点で、大きな意義を認めることができると思われる。本年度はまた、自然主義的な知識論・認識論の展開の一貫として、脳神経科学リテラシーの知識論の研究を進め、科学コミュニケーション論との接点を探った。これは認識論を従来のようにもっぱら知識産出の場面に限定するのではなく、知識が伝達・流通され、利用・消費される場面まで含めて議論することを目指す点で、いわば「実践的認識論」を志向するものであり、「知識の価値」をめぐる現代認識論に対しても新しいアプローチとなりうるだろう。なお価値論に関して、エンハンスメントに関わる議論と絡めて価値の全体論的性格についての考察を進めたという点もまた、今年度の成果の一つとして挙げることができる。
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Research Products
(4 results)