2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J04097
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
植原 亮 日本大学, 文理学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 哲学的自然主義 / 実在論 / 認識論 / 自然種 / 道徳性 |
Research Abstract |
本年度の研究は、昨年度末に東京大学大学院総合文化研究科に提出した博士論文「実在論と知識の自然化」の成果を発展させることを中心として実施された。具体的に言えば、以下の三点を挙げることができる。第一に、人工物をめぐる実在論に関して、規約主義的な見解からそれを擁護すること、また、実在論の内部において可能な複数の立場の整理・検討すること、第二に、知識の自然種論に関して博士論文で提示した枠組みが、たとえばW・V・クワインの提出する知識の全体論や、D・デイヴィドソンが捷唱する合理性をめぐる議論など、いわゆる分析的伝統においてスタンダードになっている哲学的学説といかなる関係にあるのか、という点の明確化、第三に、自然種の理論にもとづく自然主義の枠組みと、多元論的自然主義のような実在論的志向ではない自然主義的な立場と間にいかなる関係や相違があるのかについての検討である。これらに加え、今後の課題として、信念の存在論的身分やJ・サールらのいう社会的実在性に関する議論の検討が必要であることも明らかになった。以上は、哲学的自然主義の一般的理論のもとに、多くの領域においてさまざまな成果を挙げつつあるものとして評価することができるだろう。本年度はまた、哲学的自然主義の一展開としての脳神経倫理学における研究でも、道徳性の脳神経科学的基盤に関する理論的基礎、とりわけその生得性概念との関連についての研究が進展し始めたという点も成果のひとつとして挙げることができる。
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Research Products
(5 results)