Research Abstract |
申請者は,ブタ体内の卵子成熟機構である卵胞発達と排卵機構を理解するために,マーカー遺伝子の絞り込みとして,マウスを用いて研究を行ってきた.前年度までに,排卵過程で,ブタ,マウス共にEGF like factorが卵の成熟機構に大きく寄与すること,また既知のEGF like factor以外に新たに新規のEGF like factorであるNeuregulin1(NRG1)が発現していることを見出した.そのため,本年度は,(1)遺伝子改変が容易なマウスを用いて,卵巣特異的ノックアウトマウスを作成し,その形質を検討した.さらに,(2)排卵過程でEGF like actorが誘起する卵成熟の新たな生理機構を明らかにすることに成功した. (1)卵成熟を誘起する卵丘細胞,顆粒層細胞特異的にNRG1をノックアウトするNRG1flox/flox Cyp19-Creマウスを作製した.この雌マウスは,産子数が有意に減少し,早期閉経を呈することが明らかになりつつある.現在は引き続き雌マウスのフェノタイプを詳細に調べている. (2)これまで,LH刺激後に誘起されるEGF like factorが誘起する卵丘細胞卵複合体が卵胞内に遊離する現象である卵丘細胞卵複合体の膨潤のメカニズムを初めて明らかにした.この一連の現象は,ガン細胞で認められるEGF like factor刺激が誘起するCalpain活性による細胞遊走が原因であった.これらは,マウス,ブタ両者でCalpainが認められ,哺乳動物共通の機構であることも見出している.さらにタイムラプスを用いた研究によって,これらの細胞が拡散モデルと酷似したパターンで広がっていること,In silicoによる再現実験でも卵丘細胞の膨潤にみられる形態が観察できた.現在これらを論文にまとめ,投稿中である.
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