2009 Fiscal Year Annual Research Report
カンボジア、氾濫原のトムノップ灌漑をめぐる「共同」―その地域性・歴史性について―
Project/Area Number |
09J04215
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
奥田 梨江 (小笠原 梨江) Kyoto University, 地域研究統合情報センター, 特別研究員(DC2)
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Keywords | カンボジア / 灌漑 / 共同 / 地域研究 / 資源管理 |
Research Abstract |
本研究は、カンボジアの氾濫原にみられる「トムノップ」と呼ばれる土堰堤を用いた在来灌漑に焦点を当て、その利用・管理をめぐる人々の営みと「共同」のありかたを、今日のカンボジア農村社会を取り巻く自然、社会経済的状況や、人々の行為を支える文化とのかかわりにおいて理解することを目的とする。 平成21年度は、これまでに実施した定着調査で収集した一次資料の整理・分析をおこなった。また、トムノップ灌漑をめぐる「共同」という社会的行為を一般論と地域の文脈の双方から多角的に理解することを目指して、幅広く文献を渉猟した。平成21年度中におこなった研究発表は皆無であるが、上記の作業より得られた知見について論じた草稿が、間もなく投稿論文として完成する。本論文では、モノとしての灌漑システムに着目し、その物理的特徴が灌漑の利用・管理のしくみをどう規定しているかを明らかにする。 具体的には、トムノップ・システムのもつ卓越した貯水機能とそれによる用水供給の確実性、システムとしての完結性・独立性、さらに灌漑方法が、受益者の共同による「タイト」な用水管理を促し、その上に受益者個人の意思決定を重視した「フレキシブル」な用水利用を成り立たせていると結論付ける。本論文は、数少ないカンボジアの資源管理に関する研究の蓄積に貢献するものである。また、資源の形態や地域における重要性の違いが、その利用・管理のしくみを大きく規定することの一例を示し、カンボジア農村社会における「共同」のありかたを再考するという意義をもつ。
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