2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J04219
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
本田 光子 Tokyo National University of Fine Arts and Music, 大学院・美術研究科, 特別研究員DC2
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Keywords | 俵屋宗達 / 琳派 / やまと絵屏風 / 舞楽図 / 醍醐寺 / 料紙装飾 |
Research Abstract |
本研究は俵屋宗達について、近年における「琳派」概念の見直しを受け、作品をめぐる問題点の洗い直しをもとに、詳細な観察と諸資料を通して作品が生み出された当時の文脈を回復し史的位置付けを再考することを目指す。本年度はまず、前年から継続して調査研究をすすめている宗達筆「舞楽図屏風」(醍醐寺蔵)について論文をまとめた。これは土谷恵氏や五十嵐公一氏らによる醍醐寺関連資料の紹介をうけ、宗達活躍当時に醍醐寺でそれまで途絶えていた伝統行事の桜会(主に桜の時期の舞楽をともなう法会)を再興しようとする動きのあったことを指摘し、このことが同寺が宗達に桜をともなう舞楽図の制作を注文した一因となった可能性を述べたものである。これまで構図や色彩の効果に論点が集中しがちであった作品に、制作背景という新たな視点から解釈を加えることを試みた。成果は「俵屋宗達筆「舞楽図屏風」の制作背景」として『美術史』167冊に掲載された。 つづいて、宗達が前時代および同時代の造形とどのような影響関係にあったかという点について、いわゆる中世やまと絵屏風からの図像と料紙装飾的技法の摂取という点から調査をすすめた。宗達は作品の独自性がとくに強調される傾向にあり、先行作例とのかかわりを具体的に検証する余地がある。主な調査対象は、宗達筆「槇檜図屏風」(石川県立美術館)と宗達筆「松島図屏風」(フリーア美術館、アメリカ)である。実物に接しての細部観察により得られた知見は学内での口頭発表を経て、現在論考を準備中である。さらにフリーア美術館では宗達筆「雲龍図屏風」の調査も行い、これをもとに宗達の水墨画技法についても分析をすすめている。
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Research Products
(1 results)