2011 Fiscal Year Annual Research Report
上皮増殖因子受容体ErbB2/Neuの膜貫通部位-膜近傍部位の機能構造解析
Project/Area Number |
09J04227
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松下 千紘 大阪大学, 蛋白質研究所, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 膜蛋白質 / 固体NMR / 受容体チロシンキナーゼ / ErbB2/Neu |
Research Abstract |
本研究では細胞膜上での膜タンパク質を介した情報伝達、特に細胞の分化・増殖を調節する受容体型チロシンキナーゼの活性制御機構の解明を目指し、未だ機能構造の解明が遅れている受容体の膜貫通-膜近傍部位の役割に関する知見を得るべく、野生型と変異型の機能構造の比較解析を行った。これまでの研究から、ErbB2/Neuの膜貫通部位はヘリックス構造をとっていること、膜近傍部位はランダムな構造をとっており、また野生型と変異型では膜貫通部位の二量体の会合面が異なる事が示された。さらに蛍光実験から、細胞質内膜近傍部位は生体膜に静電的に結合していること、そしてこの相互作用部位には生体膜に存在するPhosphatidylinositol-4,5-bisphosphate(PIP_2)が深く関与し、野生型と変異型ではPIP_2の添加に伴う蛍光強度の変化の様子が異なることが観察された。そこでこの蛍光実験の結果を構造の視点から観察すべく、膜近傍部位の運動性に注目した固体NMR Insensitive Nuclei Enhanced by Polarization Transfer(INEPT)法による測定を行った。INEPT法は溶液NMR測定においてよく用いられる測定法であり、本実験を行う上で特筆すべき特徴として、運動性が高い場合にピーク検出が可能であることが挙げられる。そこで、野生型と変異型の膜近傍部位に安定同位体標識を施し測定したところ、変異型は高い運動性を持った状態、つまり脂質二重膜から解離した状態にあることが示された。これらの研究結果のまとめとして、リガンド結合を起点とする受容体チロシンキナーゼの構造変化に基づいた活性制御機構モデルを立てた。このモデルはこれまでに報告されている生物学的実験報告に矛盾しないものである。
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Research Products
(3 results)