Research Abstract |
大気ブロッキング(以下,ブロッキング)は,日本を含んだ中緯度偏西風帯において,半径約5000kmに及ぶ高気圧が約10日程度停滞・持続し,その間に偏西風上流側から流されてくる移動性高低気圧を'ブロック'する.いったんブロッキングが発生すると,長い間通常と異なる天候状態となるため,異常気象と密接に関係している.しかしながら,ブロッキングの発生や持続のメカニズムについては未だによくわかっておらず,それに加えて現在の数値予報の技術でも,その発生・持続の予報が困難である(Matsueda et al.2009).そのため,異常気象の原因解明や,数値予報技術の向上のため,ブロッキングのメカニズムについて研究が必要とされる. 本年度はブロッキングの持続メカニズムについて,我々が提唱する独自の持続メカニズムをより堅固にするために研究を行った.その際に主に二つの解析を行った,一つは現実のブロッキング事例についての解析(事例解析),もう一つはブロッキングが発生する環境を簡易的に模した,理想数値モデルでの解析(数値実験)である. まず事例解析については,ブロッキングの各事例を,アルゴリズムを用いて10事例検出し,それぞれについての力学的な解析を行った.さらに,その10事例を独自の方法で合成,つまり本質を失うことなく平均することにより,ブロッキング現象についてのより普遍的な解析結果に迫った.残念なことに,今回合成解析で得られた結果は我々の予想とは異なるものであったが,来年度はこの合成解析の手法を応用して,よりメカニズムの核心にせまる解析を行う予定である.そして数値実験においては,ブロッキングがとり得る2つの気圧パターン,すなわち2つの形状をモデル化した.その両方の形状で数値実験を行い,いずれにおいても自身の提唱するメカニズムが有効であることがわかった.
|