2009 Fiscal Year Annual Research Report
雄の配偶履歴に依存した雌の配偶者選択:時間的制約下におけるコピー戦術の進化
Project/Area Number |
09J04260
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
松本 有記雄 Nagasaki University, 生産科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 配偶者選択 / Mate-choice copying:コピー戦術 / 子の保護 / 雄によるハラスメント |
Research Abstract |
他個体の配偶者選択を観察し真似する「Mate-choice copying:コピー戦術」は多くの種で報告されているが、その進化要因は未だ不明である。本研究では、潮間帯に生息する雄保護魚類であるロウリソクギンポ雌のコピー戦術を実証し、その進化要因を明らかにすることを目的とした。過去の研究で、雌は巣内の卵の発生段階に関係なく前日に卵を獲得した雄を選択することが明らかになっている。この配偶履歴に依存した雌の配偶者選択は、コピー戦術を示す典型的なパターンだと言われている。さらに、雌の配偶者選択を追跡した結果、ペア産卵の周辺に複数の雌(2-4個体)が定位し、それらの雌が、通常産卵に不可欠な雄の求愛を受けることなく、無理やり入巣して産卵した。 21年度は、これらの行動が、単に雌が魅力的な雄と配偶しているわけではなく、コピー戦術であることを実証するために、通常選択することがない前日の配偶履歴がない雄とモデル雌とのペア産卵を雌に見せその後の配偶者選択を観察する野外操作実験を行なった。結果、本来ならば雌から選ばれる可能性がほとんど無いその雄の巣に複数の雌が集まり、そのうちの数個体(1-3個体)は産卵に至った。この結果は、本種雌がコピー戦術を採用している可能性を強く示唆している。過去の研究で、雌は日齢が若い卵を多く保護する雄を選択すれば、捕食に対する「薄めの効果」から高い卵の生残率が期待できることが分かっている。しかし、本種雌は、巣内の卵の発生段階を識別できないのに加えて、産卵せずに出巣するとオスから激しく噛み付かれ傷付くことから、巣内の卵の確認が困難である。ゆえに、安全かつ正確に雄を選択できるコピー戦術が進化したのかもしれない。
|
Research Products
(1 results)