2009 Fiscal Year Annual Research Report
水稲農耕伝播のメカニズムの実証的研究-韓半島南部と日本列島をケースとして-
Project/Area Number |
09J04282
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
端野 晋平 Kyushu University, 人文科学研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 水稲農耕 / 伝播 / メカニズム / 炭素14年代 / 胎土分析 / 石材流通 / 使用痕分析 / 気候変動 |
Research Abstract |
本研究は、韓半島南部から日本列島への水稲農耕伝播のメカニズムを解明することを目的とする。当該年度は、炭素14年代の検討、土器の製作技法の検討、土器の胎土分析のための予備的調査、石器の石材流通の検討のための予備的調査、石器の使用痕分析を行った。炭素14年代の検討にあたっては、韓半島南部無文土器時代の年代測定データの報告を収集し、統計学的な検討を行うことによって、無文土器時代の各時期と日本列島の弥生時代開始期の暦年代の妥当な年代値を導き出した。土器の製作技法については、日本と韓国に所在する調査・研究機関に赴き、遺物の詳細な観察と写真撮影を行うことによって、分析に先立つ基礎データの蓄積を行った。土器の胎土分析や石器の石材流通の検討に先だって、日本国内において地質調査と石材原産地の巡検を行った。石器の使用痕分析については、太宰府市教育委員会のご協力を得て、高倍率顕微鏡を用いた使用痕の観察を行い、また自身が購入した携帯型顕微鏡を用いての観察テストも行った。土器の胎土分析については、日本考古学協会に参加し、専門家と議論を行うことによって、方法論的理解をより深めた。以上の研究活動のうち、炭素14年代の検討によって得られた成果は、九州史学会にて発表を行った。また、同様の内容を九州古文化研究会の機関誌『古文化談叢』に投稿した。さらに、これまでの研究成果をまとめ、財団法人古代学協会の機関誌『古代文化』にて公表した。この内容は韓国語に翻訳し、韓国・嶺南考古学会の機関誌『嶺南考古学』においても公表した。日欧先端科学セミナーでは、暦年代と気候変動との関係に関する検討結果の一部を発表した。当該年度に行った研究活動は、今後、水稲農耕伝播のメカニズムを解明するにあたっての基礎を作ったという点に大きな意義がある。とりわけ、韓半島南部無文土器時代の炭素14年代の検討は、近年、問題となっている弥生時代開始年代論に一石を投じるものとして重要である。
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Research Products
(5 results)