2010 Fiscal Year Annual Research Report
水稲農耕伝播メカニズムの実証的研究-韓半島南部と日本列島をケースとして-
Project/Area Number |
09J04282
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
端野 晋平 九州大学, 人文科学研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 水稲農耕 / 伝播 / メカニズム / 炭素14年代 / 胎土分析 / 石材流通 / 使用痕分析 / 気候変動 |
Research Abstract |
本研究は、韓半島から日本列島への水稲農耕伝播のメカニズムを解明することを目的とする。当該年度は、日本列島・韓半島の先史時代における気候変動についての検討を行った。また、前年度に引き続き、土器・石器流通の検討のための考古学・岩石学的調査や石器の使用痕分析を行った。気候変動についての検討にあたっては、まず韓半島と日本列島の両地域の当該期についての遺跡堆積相分析、花粉分析、湖沼年縞堆積物分析などの気候変動データの収集と整理を行った。そして、韓半島と日本列島それぞれの地域において、様々な方法によって得られた気候変動データの相互比較を通じて、個々の気候変動推定の結果の妥当性を確かめた。また、これらの気候変動データが提示する年代の多くは、炭素14年代によるものであるため、前年度に行った炭素14年代と考古学的時期との対応関係についての検討結果をふまえ、日本列島・韓半島における気候変動の考古学的な時期をより鮮明にするよう努めた。土器・石器流通の検討や石器の使用痕分析にあたっては、日本・韓国に所在する調査・研究機関に赴き、遺物の詳細な観察と記録とを行った。それに加え、地質調査と石材原産地の巡検も行った。以上の検討結果のうち、土器についての検討については、雄山閣出版発行の『季刊考古学』113号において報告を行った。また、第13回GIS研究会や第64回日本人類学会大会では、当該期における日本列島・韓半島間の交流について、物質文化と人の形質の両側面から再検討を行った結果を報告した。当該年度に行った研究の意義は、人の取り巻く外部環境のうち、自然環境の一つである気候に焦点を当て、その変遷を考古学的時期に沿って明らかにしたという点にある。今後、ここで得られた結果と、考古学的事象とを対比することによって、本研究での最終的な目的である水稲農耕伝播のメカニズムの解明に大きく近づくことができるものと考える。
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Research Products
(6 results)